
米Metaは6月29日、脳活動から文章を復号する研究システム「Brain2Qwerty v2」を発表しました。脳内に電極を埋め込む手術を必要としない非侵襲型の手法で、リアルタイムの文章復号において、従来は外科的な計測手法で主に実現されてきた水準に近づいたとしています。
Brain2Qwerty v2では、磁気脳波計(MEG)を用いて取得した脳信号をAIが直接解析し、入力しようとした文章をテキストとして再構成します。MEGは脳の神経活動に伴う微弱な磁場を頭部の外側から測定する装置で、脳に機器を埋め込む必要がない点が特徴です。
学習には、9人のボランティアがMEG装置を装着しながらキーボード入力を行った約2万2000文のデータを利用しました。各参加者の計測時間は10時間です。従来のように、人手で設計した工程で特定の神経イベントを抽出するのではなく、生の脳信号から文章を直接復号するエンドツーエンドの深層学習を採用しています。大規模言語モデルを神経データでファインチューニングし、文脈情報を活用することで、ノイズを含む脳信号から自然な言語表現を復元しやすくしたと説明しています。デコード処理の最適化にはAIエージェントも活用し、最終的な学習設定はエンジニアが選定しました。
Metaによると、v2の平均単語精度は61%でした。他の非侵襲型手法では単語精度8%とされており、大幅な改善となります。最も成績が高かった参加者では78%に達し、復元された文章の半数超は誤りが1語以下だったということです。
侵襲型の神経補綴では、脳内に電極を配置して信号を取得し、AIデコーダーで意思伝達を支援する研究が進んでいます。一方、外科手術を伴うことから適用には制約があります。Metaは、データ量の増加に応じて精度が対数線形的に向上する傾向を確認したとしており、データ規模の拡大だけで侵襲型手法との性能差をさらに縮められる可能性があるとみています。
Metaは、Brain2Qwerty v1とv2の学習コードを公開します。共同研究先のBasque Center on Cognition, Brain, and Language(BCBL)はv1のデータセットを公開する予定です。脳損傷などで発話や意思疎通が困難になった人々に向け、手術を伴わないコミュニケーション支援技術としての発展が期待されます。
出典:From Brain Waves to Words: Brain2Qwerty Offers a New Path to Communication Without Surgery
