
Stable DiffusionでLoRAを使ってみたいけれど、なんだか難しそう……。
そんな方に向けて、この記事ではLoRAとは何かをわかりやすく解説します。
Stable DiffusionでのLoRAの使い方や入れ方、フォルダ分けによる管理方法、商用利用時の注意点まで幅広くカバー。
LoRAを使って、AIイラスト制作の表現の幅をもっと広げてみませんか?
LoRAとは?仕組みとメリットをわかりやすく解説

Stable DiffusionでAI画像を生成する際、思い通りのスタイルやキャラクターを表現するのはなかなか難しいですよね。
そんなときに役立つのが「LoRA」と呼ばれる拡張モデルです。
LoRAは「Low-Rank Adaptation」の略で、ベースとなる学習済みモデルに特定のスタイルや要素を付け足すための追加学習データです。料理で言えば、味のベースはそのままに、スパイスやハーブだけを加えるようなイメージです。
Stable Diffusionのベースモデルが数GBにもなるのに対し、LoRAは数十〜数百MBと非常に軽量です。そのため、ダウンロードや管理がしやすく、複数のLoRAを組み合わせて使うこともできます。
たとえば、さりげない笑顔や目の表現など、表情のニュアンスを豊かにしたり、キャラクターをより魅力的に見せる光の描写を加えたりといった、繊細な調整も可能です。
難しいプロンプトを使わなくても、LoRAを組み合わせることで、あなたのAIイラストに感情や空気感を宿らせることができるでしょう。
Stable DiffusionでのLoRAの使い方:WebUIでの基本操作ガイド

ここでは、実際にダウンロードしたLoRAをStable DiffusionのWebUIでどのように使うのか、基本的な操作手順を解説します。
LoRAのダウンロード先(Civitai/Hugging Face)
Civitai は、LoRAをはじめとするAI生成モデルの配布に特化したポータルサイトです。

Civitaiでは、検索バーに「effect」「face」など探したいLoRAの系統を入れることで、直感的に検索できます。
また、画像のように、SD1.5のLoRAだけを検索する、などといったフィルターもかけられるため、「LoRAをダウンロードしたけれど自分のモデルに使えなかった」ということが起こりにくいです。プレビュー画像が豊富で分かりやすく、ライセンスもLoRA個別のページに記載されています。

Hugging Faceは、より技術寄りのモデル共有プラットフォームです。

LoRAも多く配布されていますが、検索性やプレビューの見やすさはCivitaiよりやや劣ります。
公開されているLoRAはプロジェクト構造に近く、探し方には慣れが必要です。ライセンス情報は基本的にREADME.md
などに記載されているため、よく読まないと分からないことも多いです。
Hugging FaceでLoRAを探すときは「LoRA」「Stable Diffusion」「SD1.5」などのキーワードで検索するのがコツです。ただし、Civitaiと比べて探しやすさは劣るため、初心者にはCivitaiの利用を推奨します。

LoRAの推奨ウェイト設定と適用例
LoRAは設定するウェイト値(重み)によって、効果の強さが変わります。
今回は、JujoHotaruさんのLoRAを例に、表情変化やディティールの強化がどのように反映されるかを画像つきで比較してみました。実際にどのくらいの強度で使えば自然に仕上がるのか、参考にしてみてください。
今回使ったLoRAがSD1.5用なので、モデルはSD1.5系列の AnythingV5Ink_v5PrtRE を使っています。
使用したLoRA名 | ダウンロード元 | 備考 |
---|---|---|
hotarueye_jitome3_v100 | Civitai :ジト目セットA | 表情変化(ジト目)LoRA |
hotaru_detail | Civitai :Hyper detailer | 質感・まつげ・瞳などのディティール強化LoRA |
ポジティブプロンプトは基本部分は共通させて、LoRA適用部だけ変更しています。
1girl, focus on face, upper shot, black hair, pink eyes, bob hair, simple shirts, simple green background,
[2.ディティール強化のみの場合に残す:100]
<lora:hyperdetailer_v095:0.7>
[3.ジト目のみの場合に残す:100]
<lora:hotarueye_jitome3_v100:1>
[4.ディティール強化とジト目の複合の場合に残す:100]
<lora:hotarueye_jitome3_v100:1> <lora:hyperdetailer_v095:0.7>
ネガティブテキストは共通して最小限のものを入れています。
(worst quality:2),(low quality:1.5),(normal quality:2),bad anatomy, bad hands, missing fingers, fewer digits, text, watermark
具体的なStable Diffusion WebUIの画面と出力は、以下のようになります。

LoRAを加えていない画像と比較すると、プロンプトを変えずとも、LoRAを導入するだけでディティールや表情が変わることが分かります。
パターン | サンプル画像 |
---|---|
① LoRAなし | ![]() |
② ディティール強化のみ | ![]() |
③ ジト目のみ | ![]() |
④ ディティール+ジト目併用 | ![]() |
LoRAがうまく反映されない時のチェックリスト
「プロンプトにLoRAタグを入れたのに、画像に反映されない……」
そんな時は、以下のポイントを確認してみてください。
まず、使用しているLoRAとベースモデルのバージョンが一致しているかを確認しましょう。LoRAは、SD 1.5 向けや SDXL 向けなど、特定のモデルバージョンに対応して作られています。たとえば、SD1.5用のLoRAをSDXLのベースモデルで使おうとしても、うまく反映されないことがほとんどです。
次に、ウェイト(weight)の値が適切かを確認してください。ウェイトが0に近いと、LoRAの効果はほとんど反映されません。逆に1.0を大きく超えると、画像が破綻したり、不自然になることがあります。
まずは weight=0.6〜0.8
程度から試すのがおすすめです。LoRAのダウンロードページに推奨ウェイトが書いてあることもあるので、その場合はそちらをまず試しましょう。

たとえばジト目LoRAはウェイト1が推奨なので0.5だとあまり効果が得られていないことが分かります。
そのほか、LoRAファイルが、Stable Diffusion WebUIの models/Lora
以下のフォルダに配置されているかを確認しましょう。誤ったフォルダにあると、読み込まれず反映されません。WebUIを再起動してモデル一覧が更新されているかなどもチェックしてみましょう。
まれに、LoRAファイルのダウンロード時に破損していることもあります。その場合はファイルを削除し、再ダウンロードしてみてください。
Stable DiffusionへのLoRAの入れ方:ファイル配置とフォルダ分けのコツ

ダウンロードしたLoRAファイルを、どこに保存すればいいか迷いますよね。
ここでは、LoRAの正しい配置場所と、後々の管理を楽にするためのコツをご紹介します。
models/Loraへの配置手順
Stable Diffusion WebUIをインストールしたフォルダの中に、models/Lora
というLoRA用のフォルダがあります。ダウンロードした .safetensors
形式のLoRAファイルを、この Lora
フォルダ内にコピーしてください。
コピー後、WebUIを再起動するか、[モデル一覧の更新] ボタンを押すことで、LoRAがStable Diffusion WebUIの一覧に表示されるようになります。

このような形でフォルダ内にLoRAをコピーします
LoRAファイルは、models/Lora
フォルダの直下だけでなく、その中に作成したサブフォルダ内に配置しても認識されます。この機能を活かして、「ベースモデルの種類」や「用途」ごとにフォルダ分けをしておくと、管理がしやすくなります。
LoRAの管理術:フォルダ分けと命名ルール
models/Lora
フォルダにLoRAを追加していくと、ファイル数が増え、どれがどのモデル用でどんな用途だったか分からなくなってしまいます。そこでおすすめなのが、「ベースモデルのバージョンごと」「LoRAの用途ごと」にサブフォルダを分けて整理する方法です。
たとえば、Stable Diffusion 1.5 向けのLoRAは Lora/SD15/
に、SDXL用は Lora/SDXL/
にまとめることで、モデル違いによるミスを防げます。特にこの2つのベースモデルのバージョンのLoRAはほぼ互換性がないため、まずこの階層でLoRAを分けることをお勧めします。
さらに、用途に合わせて以下のように分けておくと探しやすく、作業効率も上がります。
Lora/
├─ SD15/
│ ├─ styles/ ← 画風系(水彩・厚塗りなど)
│ ├─ expressions/ ← 表情・ポーズ系(笑顔・ウィンクなど)
│ └─ outfits/ ← 衣装・小物系(制服・メイド服・ヘッドホンなど)
│
└─ SDXL/
├─ styles/ ← SDXL対応の画風系LoRA
├─ expressions/ ← SDXL対応の表情・ポーズ系
└─ outfits/ ← SDXL対応の衣装・小物系

このように models/Lora/SD15/expressions
にLoRAをコピーします

Stable Diffusion WebUI上でもフォルダ分けされた状態で表示されます
上記は具体的にファイル分けした例です。このように整理しておけば、「このLoRAはどのモデル用で、どういう目的か」がひと目でわかるようになります。
なお、LoRAファイル名は配布元によって分かりにくいものも多いため、自分で分かりやすい名前に変更するのもおすすめです。ファイル名を変更すると出所が分からなくなることがあるため、元のファイル名や配布URLを .txt
メモなどで保存しておくと安心です。
例:expression_smile_strong.safetensors
、style_anime_flat.safetensors
LoRAの管理術:組み合わせ・重みの手動保存
複数のLoRAを使い分けていると、「どのLoRAをどれくらいのウェイトで使ったか」を後から思い出せない……ということも多いですよね。
Stable Diffusion WebUI では、使用したLoRA名やウェイトは画像のメタデータ(PNG Info)に自動で記録されます。画像から読み取ることで再確認することも可能です。

この画像のPNG infoからは、<lora:hyperdetailer_v095:0.7>
を利用したことが分かります。
ただし、LoRAの組み合わせが多くなると都度画像を確認するのも大変なので、自分で手動で記録しておくのもおすすめです。
プロンプトとウェイトをテキストでまとめた .txt
ファイルを画像と一緒に保存したり、Notionやスプレッドシートなどに使ったLoRAとウェイト、結果画像を一緒に記録しておくなどを行うといいでしょう。
お気に入りの組み合わせをすぐに再現できるようにしておくと、作業効率がぐっと上がります。
Stable Diffusionの構築が難しいならConoHa AI Canvasを使おう

Stable Diffusionを使ってみたいけれど、「インストールや設定が難しそう」と感じていませんか?
そんな方には、すぐに使える環境が整っている「ConoHa AI Canvas」がおすすめです。
最初からStable Diffusion WebUIが導入されているため、専用PCや複雑な準備は一切不要。ベースモデルとLoRAファイルをアップロードするだけで、すぐに画像生成を始められます。
たとえば、「こんなキャラを描きたい」というイメージがあるときも、LoRAを選んで反映させるだけ。難しい設定やコマンド操作は必要ありません。
初めての方でもスムーズに使えるよう設計されているので、「本当に使えるのかな?」と不安な方でも安心して試せますよ。
Stable DiffusionにおけるLoRAの商用利用ガイド:ライセンス確認と注意点

LoRAを使った画像生成を商用で行う場合は、ライセンスの内容を必ず確認することが重要です。
CivitaiやHugging Faceなどに公開されているLoRAであっても、元となる素材やデザインが著作権を侵害していないかどうかまでしっかりチェックしましょう。
ライセンス条件を守らずに使用すると、トラブルにつながる可能性もあります。
ここでは、LoRAのライセンス確認方法と、商用利用時に注意すべきポイントを紹介します。
OpenRAILライセンスの確認方法
Stable Diffusionで配布されている多くのLoRAは、「OpenRAILライセンス」のもとで公開されています。このライセンスは、利用者が生成AIモデルを再利用・再配布・商用利用する際のルールを明確にするものです。
OpenRAILライセンスでは、モデルの再配布や商用利用をある程度許可しつつ、特定の禁止事項(例:有害コンテンツの生成など)を定めています。
Stable Diffusionやその派生モデルで特によく見られるのが、「CreativeML OpenRAIL-M」ライセンスです。このライセンスでは商用利用が許可されておりますが、暴力的・差別的な画像生成をしてはいけないなど、禁止事項を遵守する必要があります。
同じOpenRAILライセンスを用いていても、「クレジット表記をしなくてはいけない」「OpenRAILライセンスをもとにしているけれども商用利用は不可」など、さまざまな違いがあるので、LoRAごとにライセンスの確認が必要です。
Civitaiの場合は次のクレジット表記ルールで具体例とともに解説しますが、Hugging Faceの場合はまずライセンス情報を探すことが難しいことが多いので、その点でもCivitaiからLoRAを探した方がいいでしょう。
プラットフォーム | ライセンス確認方法 | 備考 |
---|---|---|
Civitai | モデルページ右下の「License」欄を確認。商用利用の可否やクレジット要否がアイコンで表示される。 「Custom License」の場合は、リンク先を確認。 | 視覚的にライセンス表示が分かりやすい |
Hugging Face | README.md や LICENSE ファイルに記載されていることが多い。その他の場所に記載されていることもある。 | 検索性やライセンス確認の難易度がやや高め。記載が不明瞭な場合は商用利用を避けるのが安全 |
有料案件・同人誌でのクレジット表記ルール
Civitaiなどで配布されているLoRAの中には、「商用利用可だがクレジット必須」とされているものがあります。以下のような場面で画像を使用する場合、それぞれの形式に合わせてライセンス表記を入れましょう。
今回はCivitaiにあるSD1.5用の画風LoRA、PencilSketch JJLを例にとって説明します。

Civitaiではページの右下に、このようにアイコンとともにライセンスが記載されています。
この場合は、「クレジット表記必須(1行目、人アイコン)」「生成した画像は商用可能(2行目)」というライセンスになっています。
ライセンス表記の入れ方としては、作者名とLoRA名、URLが分かるように入れましょう。また、ライセンス表記は、使用場面に応じて、分かりやすい適切な場所に入れましょう。
使用場面 | 表記位置の例 |
---|---|
Webサイト/SNS投稿 | 画像の近く/投稿文中 |
収益化されたYouTube動画 | 概要欄/エンドカード/動画内のクレジット |
書籍・同人誌など印刷物 | 奥付/素材提供欄/制作メモ欄 |
クレジット表記の文例は下記を参照してください。
この画像は、Pencilsketch-JJL LoRA(作者:jjludemann313、Civitaiよりhttps://civitai.com/models/102630/pencilsketch-jjl)を使用して生成されました。
This image was generated using Pencilsketch-JJL LoRA by jjludemann313, available at Civitai (https://civitai.com/models/102630/pencilsketch-jjl).
よくある質問(Q&A)とトラブルシューティング

- LoRAを使ったのに、画像に変化が感じられません。なぜ?
-
LoRAがうまく反映されない原因として、以下のようなものが考えられます。
- 適用しているLoRAとベースモデルのバージョンが合っていない(例:SD1.5用をSDXLで使っている)
- ウェイト(strength)の数値が低すぎる(0.1〜0.3だと変化が見えにくいことも)
- WebUIのLoRA指定が間違っている、もしくは反映に失敗している
詳しくはLoRAがうまく反映されない時のチェックリストを確認してください。
- 複数のLoRAを組み合わせて使うにはどうしたらいいですか?
-
WebUIのLoRA入力欄に複数のLoRAを続けて記述し、それぞれにウェイトを設定することで併用が可能です。
例:<lora:styleA:0.6>, <lora:poseB:0.7>
ただし、似た役割のLoRAを重ねると干渉して効果が出にくくなったり、破綻することがあります。
- 画像が崩れてしまう(破綻する)のはなぜ?
-
以下の原因が考えられます。
- ウェイトが1.0以上など高すぎる(推奨ウェイトが書いていないLoRAでは、まずウェイトを0.6〜0.8程度に設定してから、1つずつ適用して確認してみてください)
- ジト目LoRAとつり目LoRAを同時に入れるなど、LoRA同士の相性が悪い
- ベースモデルはリアル寄りなのにアニメ系のLoRAを適用しようとするなど、LoRAとベースモデルの相性が悪い
- 商用利用する予定なのですが、著作権的に大丈夫ですか?
-
配布元(CivitaiやHugging Face)でライセンス表記を必ず確認してください。
「OpenRAIL-M」などのライセンスで商用可とされていても、元ネタが著作権キャラや実在人物である場合は注意が必要です。迷ったら利用を控えるのが安全です。
まとめ:LoRAを使ってAI画像生成の表現力をアップしよう

LoRAは、Stable Diffusionの表現力を飛躍的に高めてくれる強力なツールです。
画風・表情・衣装・ポーズなど、細やかな調整が可能になることで、AIイラスト制作がもっと自由で楽しくなるでしょう。
本記事では、LoRAの基本的な仕組みから導入方法、便利な活用例や商用利用の注意点までを解説しました。
初めての方も、一歩ずつ試していくことでLoRAの楽しさがわかってくるはずです。
ぜひ、お気に入りのLoRAを見つけて、自分だけの世界観をAIで描き出してみてください。