
AI音声技術を開発するスタートアップのElevenLabsは、シリーズCラウンドで1億8000万ドル(約270億円)を調達し、企業評価額が33億ドル(約4950億円)に達したことを発表しました。
今回の資金調達は、ベンチャーキャピタル大手のa16zとICONIQ Growthが共同で主導しました。
ElevenLabsは、音声AI技術を活用した合成音声や音声認識システムを提供し、メディア、ゲーム、テクノロジー分野の企業に幅広く導入されています。

今回の資金調達により、同社はAI技術の開発をさらに強化し、ビジネスの拡大を図る計画です。
CEOのマティ・スタニシェフスキ氏は、表現力が豊かで制御可能な音声AIモデルの開発に加え、テキストと音声を統合した「オムニモデル」の研究にも注力していると述べています。
新規投資家として、NEA、World Innovation Lab(WiL)、Valor、Endeavor Catalyst Fund、アブダビのLunateが参加し、既存投資家のSequoia CapitalやSalesforce Venturesなども追加出資しました。
さらに、日本のNTTドコモ・ベンチャーズをはじめとする戦略的パートナーも投資を行っており、ElevenLabsの技術を活用する企業が資金提供にも関与しています。この動きは、同社の今後の日本市場への展開を示唆していると考えられます。
ElevenLabsは、昨年のシリーズBラウンドで8000万ドル(約120億円)を調達し、当時の評価額は10億ドル(約1500億円)でした。今回のシリーズCラウンドにより、累計調達額は2億8100万ドル(約420億円)に達しました。
今回の資金調達は、スタートアップの資金調達が厳しさを増す中で実施された点でも注目されています。
同社は今後、対話型AIの開発を加速し、音声認識技術の精度向上を目指します。昨年発表したAI会話エージェントにはSpeech-To-Text機能が搭載されており、さらなる改良が予定されています。
特に、多言語対応の精度を高めることで、より自然な音声コミュニケーションの実現を目指します。また、通信企業との提携を進め、電話などの従来の音声通信システムとの統合も計画しています。
ElevenLabsは、B2B向け事業を中心に成長してきましたが、昨年には一般消費者向けのアプリ「ElevenLabs Reader」をリリースしました。このアプリでは、テキストや記事をAI音声で読み上げる機能に加え、文章をAI音声でポッドキャスト化する機能も提供されています。
同社は今後、オーディオブック市場への進出も視野に入れ、クリエイター向けのツール開発を進める予定です。