
子供の教育に革命をもたらすChatGPT。しかし子供の利用には安全性を懸念する方も多いのではないでしょうか。
その不安を解消するのが、ChatGPTの新機能ペアレンタルコントロールです。保護者が子供の利用を適切に管理し、ChatGPTを子供の教育における最高のツールに変えることができます。
本記事では、その具体的な設定方法と、安全に学習効果を高める使い方を解説します。
ChatGPTのペアレンタルコントロールとは?最新仕様と安全対策の仕組み

ChatGPTのペアレンタルコントロール機能は、2025年9月末にWeb版から導入が始まり、モバイル版にも近日対応予定と発表されています。
この機能の登場は、AIサービスにおける未成年ユーザーの安全な利用のあり方を大きく変えるものです。
ChatGPTのペアレンタルコントロール機能とは?
ChatGPTのペアレンタルコントロール機能とは、保護者が子どものアカウント設定を管理できる仕組みです。
この機能を使うことで、保護者は見せたくない内容(センシティブな内容)やChatGPTを使う時間、音声や画像の機能を柔軟に設定できます。
また、子供が困っているようなこと(自分を傷つけそうなど)が見つかったら、自動で保護者に通知が届きます。保護者は会話内容や履歴を直接見ることはできず、子供のプライバシーも守られます。
アカウントのリンクや解除もいつでも可能で、家族の安心と安全を両立できる機能です。
深刻なリスクを検知・通知するセーフティ機能
特に注目されるのが、システムが会話の内容から危険な兆候を検出した場合に、会話を高度な推論モデルに転送し、専門訓練を受けたチームが内容を確認する仕組みです。
危険があると判断された場合、保護者へメールやSMS、プッシュ通知で連絡が届くため、子供の安全を最優先に考える体制が構築されています。
機能一覧:コンテンツ制限から学習データ除外まで「できること」
保護者と子供アカウントが連携されると、保護者の管理画面から、家庭の教育方針や子供の発達段階に合わせて柔軟に設定を調整できるようになります。
| 機能カテゴリー | 設定可能な制限内容 | 推奨設定 | 活用目的 |
|---|---|---|---|
| コンテンツ制限 | 不適切な情報への物理的なアクセスを制限 | ON | 過激、危険、性的・暴力的なコンテンツからの保護 |
| 利用時間制限 | 「サイレント時間」でChatGPTを利用できない時間を設定 | ON | 使いすぎや夜間の利用を防ぎ、生活リズムを守る |
| 特定機能の無効化 | 画像生成、編集オプションの削除 音声会話モードのオフ | OFF | 特定の機能によるリスクや、学習の妨げとなる可能性をなくす |
| データプライバシー | 会話記録やファイルがAIモデルの改善に使用されないよう設定 | OFF | 子供のプライバシーを保護し、情報流出リスクを軽減 |
| 会話履歴 (メモリ) | 過去の会話履歴を記憶する「メモリ」機能のオン/オフ | OFF | AIへの依存を防ぎ、常に新しい対話意識を保つのを助ける |
通知仕様:高リスク検知時の親通知とプライバシー保護
この機能が画期的なのは、子供のプライバシー保護を徹底している点にあります。保護者は子供のチャット履歴を直接見ることはできず、子供は監視されているという感覚なく、安心してAIを学習に活用できます。
ただし、生命に関わるような重大なリスクが検出された場合に限り、保護者へ通知が届く仕組みです。例えば、以下のような通知が該当します。
- 自傷行為の意思や強いストレスの兆候を読み取った場合の「高リスク検知通知」
- 子供がペアレンタルコントロールを解除した際の「リンク解除通知」
ただし、保護者へは通知のみで本文は閲覧できません。OpenAIは、こうした緊急時においてもティーンのプライバシーを最大限尊重し、保護者に共有する情報は必要最小限に留める方針を明らかにしています。
対象年齢と連携の前提:日本では13歳以上、18歳未満は同意が必須
ChatGPTを利用するための年齢要件は、OpenAIの利用規約に基づき厳格に定められています。
日本では以下のような要件となります。
- 最低年齢は13歳以上です。
- 18歳未満のユーザー(ティーン)が利用する場合、親または法定代理人の同意が必須です。
この年齢制限は、プライバシー保護や各国での法的規制を遵守するために設定されています。ペアレンタルコントロール機能は、この13歳以上のアカウントを、保護者のアカウントとリンクさせることを前提としています。
ChatGPTペアレンタルコントロールの設定方法と初期推奨セット

ここでは、実際に保護者がアカウントを連携し、子供の安全を確保するための具体的な手順と、初期設定で必須となる推奨項目を解説します。
ChatGPTペアレンタルコントロールのアカウント連携手順
保護者によるアカウント連携プロセスに基づき、手順を解説します。
保護者のChatGPTアカウントにログイン後、画面左下(またはメニュー内)にある「設定」に進みます。

設定画面内に新たに表示された「ペアレンタルコントロール」の項目を選択します。

「ファミリーメンバーを追加」を開き、連携したい子供のメールアドレス宛て、もしくは電話番号でアカウント連携の招待を送信します。


子供側が招待を受け取り、承諾することでアカウントがリンクされます。

連携が完了すると、保護者のアカウントの管理画面から、子供の設定を調整できるようになります。


子供側からリンク解除を行うことも可能ですが、その際は保護者に通知が届くため、勝手に制限を外されることはありません。
初期設定で必須!プライバシーを守る「3つの推奨デフォルト」
アカウント連携後、安全な学習環境を確保するため、以下の3つの設定を直ちに行うことが強く推奨されます。特に、情報流出リスクを防ぐためのデータ管理は最重要です。

モデルトレーニング(学習データ除外)をOFF
子供が入力したプロンプトや会話記録が、AIモデルの改善(機械学習)に利用されないようにします。これにより、子供のプライバシーを保護し、入力情報が意図せず外部に出力されるリスクを軽減できます
「設定」→「データコントロール」→「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにします。

メモリ機能をOFF
ChatGPTが過去の会話履歴を記憶し、それを踏まえて応答するのを停止します。AIへの過度な依存を防ぎ、プロンプトごとに自ら状況を説明し考える習慣を維持するのに役立ちます。
「設定」→「パーソナライズ」→「保存されたメモリを参照する」をオフにします。

センシティブなコンテンツの追加制限をONに
過激なコンテンツや危険なチャレンジ、性的・暴力的な表現などから保護され、子供の安全を確保します。
アカウント連携と同時に自動的にON(デフォルト)になります。

時間帯制限(サイレント時間)の使い方と活用事例
利用時間帯制限(サイレント時間)は、生活習慣を守り、AI依存を防ぐために有用です。
たとえば、「22:00〜翌7:00」をサイレント時間として設定し、夜遅くのAI利用を禁止します。
この機能を使うことで、親が毎回口頭で注意する手間が減り、家庭内のルールを保つことができます。

ChatGPTを使う子供の思考力を守るための必須ルール

ペアレンタルコントロール機能は物理的な安全を確保しますが、子供がAIに頼りすぎて「思考力」を失うリスクは、機能だけでは防げません。AIを真に学習効果の高いツールとするためには、親の指導と家庭内ルールが不可欠です。
思考停止を防ぐ家庭内ルール
AIを「答えを教えてくれる道具」ではなく、「思考を助けてくれる優秀な壁打ち相手」として使うためのルールを親子で共有しましょう。
文部科学省が2023年7月に公表した「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」でも、AIの回答を鵜呑みにせず、児童生徒が主体的に判断・評価する力を育むことが教育利用の前提と明記されています。
情報活用能力は、世の中の様々な事象を情報とその結び付きとして捉え、情報及び情報技術を適
出典:生成 AI の存在を踏まえた情報活用能力の育成強化|文部科学省
切かつ効果的に活用して、問題を発見・解決したり自分の考えを形成したりしていくために必要な資質・
能力である。
OECDの教育レポート(2023年)でも、家庭や学校が一体となってデジタル学習環境のルールを作ることが推奨されており、親子でAI利用ルールを決める試行錯誤のプロセスそのものが教育効果につながると指摘されています。
their continued use should include an alternative human proctoring option given that students from different households have very different levels of connectivity, living space and examination conditions when at home.
訳:家庭によってインターネット接続の程度、居住空間、自宅での試験環境が大きく異なることを踏まえ、AIを活用した遠隔試験監督の継続的な利用には、人間による代替手段も含めるべきです。
出典:OECD Digital Education Outlook 2023
こうした「親子でのAIルール作り」は、ChatGPTを含む生成AIの家庭利用が広がる中で、多くの保護者が注目し検索している重要テーマとなっています。
中学生向けの推奨設定
中学生(13〜15歳頃)は、AIが生成する情報の真偽を自分で判断する力がまだ十分に育っていません。そのため、誤情報や過激な内容から距離を取れるよう、「機密性の高いコンテンツを減らす」をONに設定しておくことが大切です。
また、ChatGPTが学習データとして会話内容を利用する仕組みを理解するのが難しい年齢です。「すべてのユーザーのためにモデルを改善する」をOFFにしておくことで、プライバシーを守りつつ、安全な環境を保てます。
さらに、夜遅くまでの利用は睡眠不足や友人とのトラブルの原因になることがあります。サイレント時間(Quiet hours)を設定して、使える時間帯を明確に制限しましょう。
画像生成などの機能は刺激の強い表現や偶発的な不適切画像が出る可能性があるため、音声モードと画像生成はOFF設定がおすすめです。
教育面では、「宿題の調べものに使うときは、親が一緒に回答を確認する」「AIの答えをうのみにせず、根拠を探す」など、家庭内でのルール作りが重要です。親子で会話を通じて、AIとどう付き合うかを学ぶ姿勢を育てましょう。

高校生向けの推奨設定
高校生(16〜18歳未満)は、AIを学習に活用できる力を身につけ始める時期です。この段階では、完全な制限よりも自律的な利用を促す設定に移行していくことが望まれます。
「機密性の高いコンテンツを減らす」ON・「すべてのユーザーのためにモデルを改善する」OFFは引き続き維持しつつ、サイレント時間の制限を緩和して、自分で時間を管理する習慣を身につけさせましょう。
また、画像生成や音声モードなどは、学習目的に限定して段階的に解禁します。レポートや発表資料での表現力向上に役立ちますが、目的を明確にして使用するよう指導してください。
教育面では、レポートや課題にAIを使った場合は「どんなプロンプトを入力し、どんな応答を得たか」を成果物に記録させることがポイントです。これは情報倫理の理解や透明性を高め、自分の考えとAIの出力を区別する練習になります。
13歳未満(小学校段階)の扱いと代替策
ChatGPTは利用規約上、13歳未満の利用を認めていません。文部科学省も、小学校段階の児童に利用させる際には慎重な対応が必要としています。
もし13歳未満のお子さんにAIに触れさせたい場合は、安全性が担保された環境で学習させることが推奨されます。代替策の例として以下が挙げられます。
- 教師が授業中に生成AIとの対話内容を提示し、性質や限界について情報モラル教育の一環として学ばせる
- AIクリエイティブ親子体験会など、専門家の指導のもと、安全にAI技術を学べるプログラムを活用
子供が制限をすり抜けないための対策(家庭・学校・塾向け)

ペアレンタルコントロールは有用ですが、子供が制限を回避しようとする可能性や、家庭内や教育機関での利用リスクも考慮し、多角的な対策を講じる必要があります。
連携解除や他AIアプリ利用の回避策
子供が他の生成AIアプリ(CopilotやGeminiなど)へ移行したり、規制のないブラウザ経由でアクセスしたりするリスクがあります。
すべての生成AIをアプリごとに管理することは際限なく難しいため、端末やアカウントレベルで使用制限の設定することで、より広い範囲で安全性を高められます。
- iPhoneの「スクリーンタイム」やAndroidの「ファミリーリンク」などでの利用制限
- Webフィルタリングの活用:夜間のWebサイト閲覧を制限できる機能や、学習の妨げとなるWebページを高精度で判定しブロックするフィルタリングサービスを利用
教育機関での利用指導のポイント
教育機関がChatGPTを利用させる場合、保護者からの同意取得と、不適切な使用を防ぐための明確な指導が不可欠です。
教育機関が利用指導を行う際に、特に注意すべき重要事項は以下の通りです。
- 18歳未満の利用に対する保護者の確実な同意取得(書面等で確実に同意を得る)
- 利用目的の限定と、生成物のそのまま提出は「不適切又は不正な行為に当たる」ことの明確な指導
- AI利用時のツール名称、入力プロンプト、応答、日付などの記録・明記の義務化
データプライバシーと緊急時の支援体制
教職員や保護者が子供の個人情報を生成AIに入力することは、個人情報保護法に抵触する可能性があるため、厳格に禁止する必要があります。
指示文(プロンプト)に氏名や写真などの個人情報、または学校の機密情報(成績情報など)を入力しないよう指導します。
高リスク検知通知を受け取った際、保護者は冷静に対応し、必要に応じて地域の専門機関や国際自殺防止協会などの支援機関へ誘導する体制を把握しておく必要があります。
まとめ
ChatGPTのペアレンタルコントロール機能は、子供の安全性とプライバシーを両立させる、AI時代のデジタル教育における必須機能です。
特に、生命に関わる急性ストレスの検知や、コンテンツ制限、モデルトレーニングの除外設定は、保護者にとって大きな安心材料となります。
しかし、ツールの設定だけでは、子供の思考力低下という本質的なリスクは回避できません。
保護者は、この機能を活用して物理的な安全を確保した上で、「答えをうのみにせず、ファクトチェックを必ず行う」という賢い利用ルールを確立することが求められます。
AIは、適切に指導されれば、子供の学習効率と創造性を飛躍的に高める強力なツールです。このペアレンタルコントロール機能の導入を契機に、ご家庭でAIとの健全な付き合い方を確立し、お子さんの未来の能力を育んでいきましょう。
