
AI搭載スマホとは、スマートフォンにNPUと呼ばれるAI処理に特化した半導体を搭載し、数々のAIを活用した便利な機能が利用できるスマホです。
近年、スマホメーカー各社からAI搭載スマホが発売されるようになり、何ができるのか、従来のスマホと何が違うのかについて気になる方も多いでしょう。
そこでこの記事では、AI搭載スマホの概要や利用できる機能、従来スマホとの違いについて解説します。
AI搭載スマホとは?定義・仕組み・最新動向

AI搭載スマホとは、人工知能(AI)を活用して、ユーザーの利便性や体験を向上させる機能を持つスマートフォンのことです。
特定の定義はありませんが、従来のスマホが命令されたタスクを実行するのに対し、AIスマホはユーザーの状況や好みを学習し、先回りして情報を提供したり、より高度な処理を自動で行ったりします。
その仕組みは、AI処理に特化したNPUという半導体を搭載し、カメラのシーン自動認識や音声アシスタントの精度向上、バッテリーの最適化などを実現しています。
近年では、文章作成や画像生成が可能な生成AIの搭載がトレンドとなっており、Appleの「Apple Intelligence」やGoogleの「Gemini」、Samsungの「Galaxy AI」などがその代表例です。
これにより、スマホ選びの基準はハードウェアの性能だけでなく、AI機能の賢さや実用性へとシフトしつつあります。
オンデバイスAIとクラウドAIの違い
オンデバイスAIとクラウドAIの最大の違いは、AIの処理をどこで行うかという点にあります。
オンデバイスAIは、スマートフォン本体に搭載されたプロセッサで全ての処理を完結させるため、インターネット接続が不要です。
これにより、処理速度が速くリアルタイム性が高いほか、個人情報などのデータを外部に送信しないためプライバシー面で優れています。
一方、クラウドAIは、データをインターネット経由でサーバーに送り、高性能なコンピュータで処理を行います。
そのため、スマホ本体の性能に依存せず、より複雑で大規模なAI処理が可能になるという利点があります。
NPUの役割
NPU(Neural Processing Unit)は、AIの計算処理に特化したプロセッサであり、人間の脳の神経回路網を模したニューラルネットワークの処理を高速かつ効率的に行う役割を担っています。
スマートフォンの頭脳であるCPUが汎用的な計算を担い、GPUが画像処理を得意とするのに対し、NPUは画像認識、音声認識、機械学習といったAI関連のタスクを専門に処理します。
NPUが搭載されたことで、リアルタイムでの被写体認識や高度な顔認証、自然な言語処理などがスマートフォン本体でスムーズに実行できるようになりました。
これにより、消費電力を抑えながらAI機能の性能を大幅に向上させることが可能となり、今日の高機能なオンデバイスAIを実現する上で不可欠な存在となっています。
主要メーカーのAI戦略
スマートフォンの主要メーカーは、独自のAI戦略を掲げ、開発競争を繰り広げています。
| 項目 | Apple | Samsung | |
|---|---|---|---|
| サービス名 | Apple Intelligence | Gemini | Galaxy AI |
| 特徴 | プライバシーを最重視 Appleのエコシステム | AIの最新機能を真っ先に体験 AIをいち早く搭載 | 実用面に優れるAI Geminiとの併用 |
AppleはApple Intelligenceを発表し、プライバシー保護を最重視したオンデバイスAIを中心に、同社製品間でのシームレスな連携体験を強みとしています。
Googleは、自社開発の高性能AIであるGeminiをPixelシリーズにいち早く搭載し、Android OS全体にAI機能を深く統合することで、検索やアシスタント機能、画像編集の革新を進めています。

またSamsungは、Galaxy AIとしてリアルタイム通訳や画像編集といった実用的な機能を前面に押し出し、Googleと協力しつつも独自のAI体験を提供することで差別化を図っています。
各社とも、ハードウェア性能だけでなく、AIがいかにユーザーの日常を豊かにするかを競う「AIスマホ時代」の覇権を争っています。
対応機種と日本語対応の現状
AI搭載スマホの代表的な機種には、AppleのiPhone 15 Pro以降、GoogleのPixel 8シリーズ以降、SamsungのGalaxy S24シリーズ以降などがあります。
また、AndroidではXiaomiやMotorolaなどの最新スマホにもAIが搭載されています。
これらの最新モデルは、高度なAI処理を可能にする高性能なNPUを搭載しているのが特徴です。
いずれの機種でも日本語に対応しており、基本的なAI機能は問題なく使用できます。
一方で最新の生成AI機能に関しては、まだ英語が先行している場合や、日本語の精度が発展途上のことも少なくありません。
とはいえ、日本市場の重要性から各社とも日本語対応には力を入れており、今後のアップデートで機能の拡充と精度の向上が期待されます。
AI搭載スマホでは何ができる?主要機能と仕事・生活のユースケース

AI搭載スマホは、私たちの仕事や生活をよりスマートで効率的に変えるさまざまな機能を提供します。
ここでは、スマホで利用できるAIの主要機能や仕事・日常生活におけるユースケースをご紹介します。
写真・動画のAI編集/生成
AIは、写真や動画の編集を誰でもプロレベルに行えるようにします。
例えば、集合写真での人物の移動やサイズ変更、不要なものの消去といった高度な編集が、指先だけで直感的に行えます。
Googleが発表した「消しゴムマジックや編集マジック」は、写真に写りこんだ不要なものを囲んだだけで簡単に消せることで当時話題となりました。
現在ではGoogleだけではなく、GalaxyやApple、XiaomiやOPPOなどさまざまなスマホでも同様の機能が利用できます。
また、少しの指示を文章で入力するだけで、思い出の写真をユニークなイラストに作り変えたり、全く新しい画像を生成したりすることも可能です。
単に綺麗に撮るだけでなく、AIが創造性を刺激し、写真や動画で自分を表現する楽しさを広げてくれます。
翻訳・要約・議事録化
AI搭載スマホは、言語の壁を取り払うことや、情報をまとめることに役立ちます。
通話中にリアルタイムで音声を翻訳する機能を使えば、言語が異なる相手ともスムーズにコミュニケーションがとれます。
また、溜まったメールや長文のウェブページも、AIが重要なポイントを抜き出して瞬時に要約してくれるため、情報収集の時間を大幅に短縮できます。
さらに、会議や講義の音声を録音すれば、AIが自動で文字起こしを行い、整理された議事録を作成してくれます。
文字起こしした文章の要約もできるため、仕事や学習の生産性が向上します。
画面理解と「かこって検索」/文脈検索
AIは、スマートフォンの画面に表示されている情報を文脈で理解し、シームレスな検索体験を提供します。
その代表が、GoogleやSamsungなどのスマートフォンで利用できる「かこって検索」で、アプリを切り替えることなく、画面内のものを指で囲むだけで、それが何かをすぐに調べられます。
Googleが提供しているGemini Liveを利用すれば、画像や動画を共有しながらAIと音声で会話ができます。
また、AI搭載スマホの中には、アプリを横断して検索が可能です。
AIは個人の文脈を理解するため、自然な言葉で検索でき、必要な情報やファイルを見つけ出してくれます。
これは単なるキーワード検索ではなく、AIがユーザーの知りたいことを深く理解して応える、次世代の検索スタイルです。
自動提案・先回り
AI搭載スマホでは、ユーザーの行動やスマホ内の情報を学習し、次に何をすべきかを先回りして提案します。
例えば、メールで予定を決定をすると、AIがそれを認識し、自動でカレンダーに予定を追加するかどうかを尋ねてくれます。
また、届いたメールの内容に応じて返信文の候補を提案したり、交通状況を考慮して予定の出発時間になると通知してくれたりもします。
さらに、Apple Intelligenceでは通知の優先順位を自動で判断し、本当に重要な通知がロック画面の上部に表示されます。
AIはユーザーが意識する前に次のアクションをサポートすることで、日々の細々としたタスクを効率化し、より重要なことに集中させてくれます。
プライバシーと安全性
AIは便利な反面、プライバシーの保護はこれまで以上に重要視されています。
Apple Intelligenceをはじめ多くのAIシステムは、メール、メッセージ、写真といった個人情報を扱う処理を、可能な限りデバイス内で完結させるオンデバイス処理を基本としています。
これにより、ユーザーのデータが外部に送信されるリスクを最小限に抑えます。
より高度な処理能力が必要な場合でも、データが保存されることのない特別なサーバーを利用するなど、プライバシーを最優先した設計がなされています。
ユーザーが自身のデータを管理し、安心して使えるようにするための技術的な取り組みが、各社の最重要事項となっています。
AI搭載スマホは何が違う?従来スマホとの違いと選び方

AI搭載スマホは従来のスマホと異なり、ただ指示をこなすだけではなく、文脈を理解した情報の提示や画像の自動編集など、より便利に利用できる機能が備わっています。
ここでは、AI搭載スマホと従来のスマホとの違いや選び方を解説します。
使用感の違い
これまではアプリのボタンを順に押す必要があった操作も、AI搭載スマホなら自然言語で指示するだけで完結します。
また、メールの返信文案を自動で作成したり、撮影した写真の不要なものを自動で消したりと、面倒な作業をAIが代行してくれます。
さらに、ユーザーの行動パターンを学習し、次の予定や必要な情報を最適なタイミングで通知するなど、能動的にユーザーをサポートする先回り操作も可能になります。
AIスマホはただの道具ではなく、ユーザーにとっての秘書のような存在となるでしょう。
ハードウェアの違い
従来のスマホには汎用的な計算を行うCPUと画像処理を行うGPUが搭載されていますが、AIスマホにはそれらに加えてNPUが搭載されています。
NPUがあることにより、画像認識や音声処理といったAIタスクをCPUよりも遥かに高速かつ低消費電力で実行できます。
また、AI処理では膨大なデータを瞬時にやり取りする必要があるため、メモリ帯域も重要視されます。
メモリ帯域はよくデータを運ぶ道路の広さに例えられます。
高性能なNPUと広いメモリ帯域、そしてAIの稼働状況に応じて電力供給を最適化する仕組みが組み合わさることで、バッテリーの消耗を抑えながら高度なオンデバイスAI機能を実現しています。
メーカー別の得意領域
AIスマホはメーカーごとに得意領域が異なり、それが機種選びの重要なポイントとなります。
AppleのApple Intelligenceは、プライバシー保護を最優先し、オンデバイス処理を基本としながら、iPhoneやMacなど同社製品全体で一貫したシームレスなAI体験を提供することに長けています。
クラウド処理が必要となる複雑なタスクでも、プライバシーを重視した特別なサーバーが利用されます。
AIに対してプライバシー面で不安がある方におすすめです。
一方でGoogleのPixelシリーズは、自社開発のAIであるGeminiを駆使し、画像・音声・テキストを統合的に扱うマルチモーダルAIの能力を最大限に活かした先進的な検索やアシスタント機能が強みです。
GoogleのAIの最新機能を真っ先に利用でき、電話の応答前にAIが相手の名前や要件を確認してくれる通話スクリーニング機能や、AIが撮影のアドバイスをくれるカメラコーチ機能( Camera Coach)など、ユニークな機能を利用できます。
とにかくAIを活用した最新の機能を試したいという方におすすめです。
SamsungのGalaxy AIは、写真内の被写体を動かしたり消したりする高度な編集機能や、画面上のあらゆるものを囲んで検索できるかこって検索など、実用性の高い便利機能でユーザー体験の向上を追求しています。
Samsung独自のAI機能とGoogleのGeminiの機能を両方利用できるため、さまざまなAI機能に興味のある方におすすめです。
必要な料金
2025年9月現在では、スマホに搭載されているAI機能の多くは無料で利用可能です。
そのため、AI搭載スマホを利用するのに必要な料金は本体代金のみです。
ただし、各社の最新AI機能を最大限利用したい場合はハイエンドモデルが必要となるため、安くても12万円台の価格となっています。
以下にApple・Google・Samsungの代表的なAI搭載スマホの料金を示します。
| スマートフォン | メーカー | 価格 |
|---|---|---|
| iPhone 16 | Apple | 124,800円~ |
| iPhone 16 Pro | Apple | 159,800円~ |
| Pixel 10 | 128,900円~ | |
| Pixel 10 Pro | 174,900円~ | |
| Galaxy S25 | Samsung | 129,000円~ |
| Galaxy S25 Ultra | Samsung | 199,800円~ |
なお、AppleはChatGPT、GoogleとSamsungはGeminiと深く統合しているため、それぞれのサブスクプランを契約することでより便利に利用可能です。

また、AI機能の提供にはサーバーの維持費など多大なコストがかかるため、将来的には高性能なAI機能を利用するためにサブスクリプションの契約が必要となる可能性があります。
そのため、今後は端末価格だけでなく、AI機能の利用料金や将来的な拡張性も考慮した機種選びが重要となるでしょう。
まとめ
AI搭載スマホは、AI処理に特化したNPUを搭載し、さまざまな便利機能を利用可能としたスマートフォンです。
従来のスマホと違い、自然言語での指示や画像編集の自動化、録音の自動文字起こしなど、仕事や日常生活で使える多様な機能搭載されています。
AppleやGoogle、Samsungをはじめスマホメーカー各社はAIを活用した機能の開発に取り組んでいます。
今後のスマートフォン選びでは、ハードウェアの性能に加え、どのようなAI機能が利用できるかも重要なポイントとなるでしょう。
