OpenAI、NYTの「データ無期限保存」要求を拒否し控訴 サム・アルトマンは「AI特権」を主張

出典:How we’re responding to The New York Times’ data demands in order to protect user privacy | OpenAI

OpenAIは米国時間5日、公式ブログで、ニューヨーク・タイムズ(NYT)などが起こした著作権訴訟に関連し、裁判所が同社に対して「ChatGPTおよびAPI利用者の入力・出力データを無期限に保持するよう求める保全命令」を下したことを明らかにしました。

同社はこれに対し、「広範で不必要な要求であり、ユーザーのプライバシーを著しく損なう」と強く批判しています。

具体的には、ChatGPTの無料版を含む各種サービス(Free、Plus、Pro、Team)およびZero Data Retention(ZDR)契約外のAPI顧客が影響を受けるとし、削除済みのチャットや、通常30日以内に自動削除されるAPIのログまで無期限保存が求められていることに強い懸念を示しました。

OpenAIはこれらが「業界慣行にも自社のプライバシーポリシーにも反している」と述べ、すでに再考を求める動議と控訴を提出したことを報告しました。

OpenAIのリリースでは、保全対象のデータが分離された安全なシステムに法的ホールドとして保管されること、アクセスできるのは限られた法務およびセキュリティ担当者のみであることを明示しています。また、OpenAIは、保存したデータをAIモデルの学習に利用しないと改めて明確にし、企業向け顧客のデータは初めから学習に使用せず、消費者も設定により学習目的での使用をオプトアウトできると強調しました。

サム・アルトマンCEOは6日未明、自身のSNSで、このNYTの要求を「過大で不必要だ」と強調し、「ユーザーのプライバシーを守るため、法的措置をとった」と述べました。

また同氏は続けて、「今回の出来事は、今後『AI–クライアント特権』が必要になることを明確に示している」と発言しています。

「AI–クライアント特権」は、アルトマン氏が以前から提唱している概念です。人々がAIに相談したり共有したりするセンシティブな情報を、医師や弁護士と同様に保護すべきという考え方であり、今回の発言はこれまでの議論を踏まえて、AIとのやり取りにおけるプライバシー保護の新しい枠組みが必要になるとの見解を改めて示したものです。

今回の控訴の結果によっては、テクノロジー企業が負うデータ保存義務の範囲を決定づける重要な前例になる可能性があります。専門家の間では、この訴訟の行方がAIを含む他のテクノロジー企業のプライバシーポリシーやユーザーの信頼感にまで波及すると予測されています。

生成AI技術を提供する企業が、どの範囲までデータの保持や開示をすべきかを問う初めての大規模な争点となった今回の訴訟。OpenAI側が勝訴すれば従来の「30日以内削除」の方針を維持できますが、敗訴の場合は業界全体がより厳しいデータ保持義務を負う可能性があります。裁判所の判断は、AIの利便性を損なわずにユーザーのプライバシーを守るバランスをどのように取るべきかという点でも注目されています。


出典:How we’re responding to The New York Times’ data demands in order to protect user privacy | OpenAI

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