アメリカではAI技術の発展に伴い、データセンターの電力需要が急増しています。
2030年には、データセンターが全米の電力消費の8%を占めると予測されており、この急増する需要に対応するため、ミシガン州は2022年に閉鎖されたパリセーズ原子力発電所を再稼働させる計画を進めています。
パリセーズ原子力発電所は、1971年に運転を開始した老朽化した施設であり、経済的理由から閉鎖されていました。
しかし、電力需要の高まりと連邦政府および州からの巨額の補助金や融資が再稼働の決定を後押ししました。
再稼働が実現すれば、この発電所は世界初の「閉鎖された後に再稼働する原子力発電所」となります。
原子力エネルギーは、過去の事故からの懸念や、天然ガスが低コストで供給されていたため敬遠されてきましたが、近年では再生可能エネルギーと並び、クリーンで安定した電力供給源として再評価されています。
特に、厳しい排出規制と化石燃料コストの増加により、原子力の重要性が再認識されています。
ミシガン州と連邦政府は、約20億ドルを投入してパリセーズ原子力発電所を再稼働させる計画で、2025年10月の稼働開始を目指しています。
この計画には、放射性物質の取り扱いや防火システムのアップグレード、新たな燃料棒の搬入などが含まれています。
また、再稼働後は少なくとも25年間の運転が見込まれています。
しかし、この再稼働計画には懸念もあります。
特に、1970年代に設計された施設が現代の安全基準を満たすかどうかが問われており、さらに再稼働を担当するホルテック社が原子力発電所の運転経験がないことも不安材料です。
また、地域住民の間では放射能漏れや核廃棄物の保管に対する懸念が根強く残っています。
この計画は、クリーンエネルギー目標の達成に向けた重要な一歩とされていますが、その安全性や環境への影響についての議論は今後も続くでしょう。
AIデータセンターの増加が引き起こす電力需要と、それに対応するためのエネルギー政策がどのように進化していくのかが注目されます。
出典:Can a Closed Nuclear Power Plant From the ’70s Be Brought Back to Life? – WSJ