
Kiroとは、AWSが開発したAI IDEで要件定義からコード生成・テスト作成まで自動化できる“仕様駆動型”の開発ツールです。
自然言語で仕様を入力するだけで構造化されたコードを生成します。要件定義から開発・検証までを一気に進められる“仕様駆動開発”を支援します。
本記事ではKiroの仕組み・使い方・料金・Cursorとの違いを紹介します。
Kiroとは|AWS発の「仕様駆動型」AIエディタ

KiroはAmazonが開発した、要件定義からコード生成・テスト・ドキュメントまでを一貫して自動化できるAI開発支援ツールです。
従来の「コードを書いてから整える」スタイルとは異なり、Kiroでは最初に仕様(Spec)を定義し、それを基にAIエージェントが自律的に実装を進めます。
Kiroは要件の抜け漏れやドキュメントとの乖離を防ぎ、チーム全体の生産性を高められる点が特徴です。
ここでは、Kiroの根幹となる思想と主要な仕組みを順に解説します。
Kiroと既存AIエディタとの違い
Kiroの最大の特徴は、AWS Bedrockを基盤にClaude Sonnet 4(またはAuto)を統合し、設計主導型の開発を可能にしている点です。
GitHub CopilotやCursorが「コード補完」に強みを持つのに対し、Kiroは「要件理解と構造化」にフォーカスしており、以下の機能を備えています。
- 要件を受け入れ基準を含むユーザーストーリーに分解する
- シーケンス図とアーキテクチャプランを使用して設計ドキュメントを作成します
- 個別のタスクにわたる実装の進捗状況を追跡する
- 製品チームとエンジニアリングチーム間で効果的に連携する
開発者は自然言語で仕様を記述するだけで、AIがタスクを分解し、コード・テスト・ドキュメントを自動生成します。そのため、アプリの土台から品質設計を意識した“仕様駆動”の開発がスムーズに行えます。
Spec-Driven Developmentとは?Vibe Codingとの違い
Vibe Codingが「その場でAIに指示して即時コードを得る」アプローチであるのに対し、Spec-Driven Developmentは仕様(Spec)を中心に据えた計画的開発を行う手法です。
Kiroでは、最初に生成されたSpecがプロジェクト全体の指針となり、変更があればAIがそれを再解釈して関連コードを更新できます。
Kiroは、変更管理の負担を減らし、要件の一貫性を保ちながら継続的な改善を行うことが可能です。
日本語プロンプトでの仕様作成例
Kiroは英語に最適化されていますが、日本語のプロンプトでもある程度設計可能です。
たとえば「予約管理システムを作りたい。ユーザー登録と予約変更機能を含む」と入力すれば、Specファイルが自動生成され、関連するAPIやデータ構造が提示されます。
ただし日本語のプロンプトでの操作は不安定なため、重要な箇所は英語でのプロンプトに切り替えを検討しましょう。
Kiroで変わる開発体験と使い方

Kiroを導入すると、これまで断片的だった「設計・実装・テスト・ドキュメント化」の工程が一体化します。AIが仕様からタスクを自動分解し、関連コードを生成・更新するため、開発者はロジック検討や品質管理に集中できます。
ここでは、Kiroによって変わる開発フローと、その仕組みを実際の利用手順とともに解説します。
自然言語→仕様→コードまで一気通貫
Kiroの基本フローは「自然言語で要件入力→Spec自動生成→コード出力」という流れです。
たとえば「商品管理アプリを作成。登録・編集・削除機能を含む」と入力すると、Specファイルが作成され、関連APIやテーブル構造が自動生成されます。
その後、AIがテストコードやドキュメントも自動的に整備します。
従来の“仕様書→実装→テスト”という分離工程を統合することで、初期設計の段階から一貫性の高い開発を実現できます。
エージェントによるタスク自動実行とは
Kiroでは、Claude Sonnet 4(またはAuto)をベースにしたAIエージェントがプロジェクト内のタスクを自動的に処理します。
Specに変更があると、AIがそれを検知して関連コードを更新し、Hookを介してテストの生成、更新、実行の自動化を行います。
特に複数人チームでは、共通仕様の変更が即座に全ファイルへ反映されるため、コミュニケーションコストを最小化しながらスピーディに開発を進められます。

Spec/Hook/Steering 各機能の役割と連携
Kiroを支える3つの要素「Spec」「Hook」「Steering」は、それぞれ異なる役割を持っています。
Spec:開発の基礎となる仕様定義書。自然言語入力から自動生成される。
Hook:IDE内のイベントでテスト生成やリント等を自動実行
Steering:AIエージェントの挙動を制御するルールセット。開発方針や使用フレームワークを指定できる。
この3層が連携することで、設計から品質担保までを一貫してAIが支援します。
Kiroの始め方

Kiroは公式サイトからインストーラをダウンロード→ログインすれば、数分でセットアップできます。
ここでは、初めて利用する人向けに「ダウンロード」と「初期利用」の2ステップで始める手順を解説します。
AWS連携や環境構築が初めての方でも、公式ガイドに沿って進めれば問題なく導入できます。
Kiroのダウンロード方法
Kiroの初期利用方法
まずは Kiro を起動し、トップ画面で「spec」を選択し、プロンプトを入力します。

今回は以下のようなプロンプトを入力しました。
# 仕様起こし
「予約管理アプリ。ユーザー登録、予約作成/変更/取消、管理者ダッシュボード。非機能要件:認証、監査ログ、SLA 99.9%。」

以下のような設計書を自動で作成してくれました。

Kiroの料金体系と月間クレジット上限を整理|無料で試すには?

Kiroはプレビュー版から正式リリースにかけて、クレジット単位での課金体系を採用しています。
各プランで上限が設定されているため、開発規模に応じて柔軟に選択できます。
ウェルカムボーナスとして新規ユーザーは500クレジットが獲得できるので、まずは無料プランで試し、精度やクレジット上限の感触を掴むのがおすすめです。
Free/Pro/Pro+ 各プランと月クレジット数
現時点のプラン構成は以下の通りです。
| プラン | 月額 | 含まれるクレジット(月間) | 追加課金 |
|---|---|---|---|
| Free | $0 | 50 credits | — |
| Pro | $20 | 1,000 credits | $0.04/credit |
| Pro+ | $40 | 2,000 credits | $0.04/credit |
| Power | $200 | 10,000 credits | $0.04/credit |
クレジット消費には、コード生成・リファクタ・Spec更新なども含まれます。一定の上限を超えると、後述の追加クレジット購入オプションを利用可能です。
Kiroの公式サイトによると「タスク上限なしエンタープライズ契約」は未実装です。
将来的にチーム課金・管理機能を提供予定ですが、現在は個人課金に留まっています。
追加クレジット購入・従量課金モデルの仕組み
kiroは、タスク上限を超過した場合、追加クレジットを購入することで継続利用できます。
追加のクレジットは1クレジットあたり0.04ドルで、実際の超過利用量に基づいて請求されます。開発フェーズごとにタスク消費が偏る場合は、月ごとに柔軟に調整できるこの仕組みが便利です。
KiroとCursorの違いとは?使い分けを3視点で比較

KiroとCursorは、どちらもAIを活用した次世代の開発支援ツールですが、目的と得意領域が明確に異なります。
Kiroは“仕様駆動型”に特化しており、要件定義からコード生成・品質検証までをAIが自動でつなぎます。一方Cursorは“即時生成型”で、エディタ上でのコード補完や修正支援に優れています。
ここでは両者の違いを「モデル」「ワークフロー」「料金」の3軸で整理し、どちらを選ぶべきかを明確にします。Cursorについて詳細を知りたい方は以下の記事をご覧ください。

搭載モデルと思想の違い
KiroはAWS Bedrockを通じてClaude Sonnet 4モデルを採用しており、「要件理解」と「文脈保持」に強みがあります。
これは、曖昧な日本語要件や設計意図を正確に捉え、構造的なSpecへ落とし込むのに適しています。
一方、CursorはOpenAI/Anthropic/Gemini等の複数モデルを中心に動作しており、コード補完や自然な文生成、リアルタイム編集に長けています。
つまり、Kiroは設計段階の全体思考型、Cursorは実装段階の作業効率型という棲み分けになります。
仕様ファイル生成やワークフローの違い
| 観点 | Kiro | Cursor |
|---|---|---|
| 中心概念 | Spec(仕様) | エディタ内対話 |
| 生成対象 | コード/テスト/Docs | コード中心 |
| 品質担保 | Hook/Steering | レビュー支援 |
| 統合 | VS Code互換/MCP | VS Code互換/MCP |
| 位置づけ | 設計主導 | 実装特化 |
Kiroの最大の特徴は「仕様ファイル(Spec)」を中心に据え、そこからコード・テスト・ドキュメントを自動生成する点です。
開発者は自然言語で要件を記述するだけで、AIが自動で構成を整理し、タスクを分割して実行します。
Cursorは対話的なコード生成に優れており、エディタ内で修正や提案を受けながらスピーディに開発を進めることが可能です。
つまり、Kiroは“構造化と整合性”、Cursorは“即応性と軽快さ”で差別化されています。
料金・課金方式の使い分け表
両ツールの料金体系は次のように異なります。
| 項目 | Kiro | Cursor |
|---|---|---|
| 料金体系 | サブスク+クレジット上限制 | 定額制(月額サブスク) |
| 無料枠 | 月50クレジット | 一部機能制限ありのFreeプラン |
| プランごと月額 | Pro $20/Pro+ $40/Power $200 | Pro $20/Pro+ $60/Ultra $200 |
| 強み | 設計~テスト自動化、品質担保 | コード補完・文脈提案が高速 |
| 向いている層 | 設計主導・チーム開発 | 単独開発・スピード重視 |
Kiroはクレジット制でPoCに向き、Cursorは定額で料金を気にせず使えるのが特徴です。開発目的や期間に応じて、最適なモデルを選ぶとよいでしょう。
まとめ
Kiroは、AWSが提供する仕様駆動型AI IDEとして、開発プロセスの効率化と品質向上を両立させる革新的なツールです。
要件定義からコード・テスト・ドキュメント生成までをAIが自動化することで、チーム開発の生産性を大きく向上させます。
今後、AIエージェントが開発現場で標準化される中、Kiroのような“仕様中心”のアプローチは大きな価値を持ちます。
まずは無料プランでKiroを試し、AIによる開発革新を自社プロジェクトで体感してみましょう。



