【前編】MOFURE開発に学ぶクリエイター価値論──キャラクターは人がつくる

この記事は、Podcast「AI未来話」のエピソード「MOFURE開発に学ぶクリエイター価値論──キャラクターは人がつくる」を再構成した内容の前編をお届けします。

ゲストには、株式会社THRUSTERのプロデューサー今野希歩子氏、プランナー脇坂真広氏が登場。

睡眠特化型AI会話アプリ「MOFURE(モフレ)」の開発秘話を通じて、AI時代におけるクリエイターの価値や、人間だからこそ実現できるキャラクター作りのこだわりについて語ります。

後半の記事はこちらから。

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【後編】MOFURE開発に学ぶクリエイター価値論──キャラクターは人がつくる この記事は、Podcast「AI未来話」のエピソード「MOFURE開発に学ぶクリエイター価値論──キャラクターは人がつくる」を再構成した内容をの後編をお届けします。
目次

ゲストのご紹介(今野氏・脇坂氏)

今野氏「THRUSTERでプロデューサーをしております今野希歩子(こんのきほこ)と申します。

これまで制作会社畑で、イベントや空間、映像、SNS、デジタルプロモーションなど、たくさんの企業やコンテンツホルダーと一緒にいろんな案件のプロデュースや制作進行を行ってきました。

小学館のグループ会社として2024年6月に誕生したTHRUSTERでは、小学館と一緒に作品やIPに先端テクノロジーを掛け算した新しい価値づくりにチャレンジしています」

脇坂氏「THRUSTERでプランナーをやっております脇坂真広(わきさかまさひろ)と申します。

私はゲーム業界でYouTubeを利用した新しい体験のゲーム作りをしてきました。新しい技術を応用したコンテンツを生み出すことに楽しみを感じていて、THRUSTERにジョインしてからはAI事業をメインに担当しています。

今後も新しい技術をいかにコンテンツに応用するか、それをどのように楽しんでもらうかを考えながらいろんな開発をしていきたいと思っています」

MOFURE(モフレ)のサービス概要と開発背景

―― MOFURE(モフレ)とはどういうサービスなのか、ご紹介いただいてもよろしいでしょうか。

脇坂氏「はい。MOFUREとは睡眠時に、寂しい夜に一緒に喋れる相手が欲しいというコンセプトから生まれたAI会話アプリになっております。アプリの中では2人のキャラクターがユーザーのことを待っていて、通話をかけてみると、一緒に楽しく話して、一緒に夜を過ごせる体験を得られる。そういったアプリになっています」

出典:【対話型AI】「MOFURE(モフレ)-キミの声と眠るアプリ-」ベータ版をリリース | 株式会社THRUSTERのプレスリリース

今野氏「少しMOFUREの補足をさせていただくと、THRUSTERという会社の前身がLATEGRAという会社でして、そこではキャラクターを動かす技術とか、音声の聞き取り、読み取りといった技術を蓄積していたので、それらを活用した『Nu-Ma Engine(ヌーマエンジン)』というAIエンジンを開発しました。今回のMOFUREはその第1弾として、あえてキャラクターを動かさず、イラストで対話型サービスを試験的にリリースしたという背景になります」

―― 今回、MOFUREはまだベータ版ということですが、アプリをダウンロードして試せる状況ですよね。

脇坂氏「はい、そうですね。開発期間は脇坂や開発陣にもかなり負担をかけてしまったのですが、3ヶ月ほどの短期間でスピードリリースをしました」

―― 最初に聞いた時はとても驚きました。AI時代になってから、開発競争がより加速しているなという印象があります。

今野氏「そうですね。色々な機能を盛り込めばもちろん色々できるんですけど、今回はあえてシンプルに削ぎ落として、スピードを最優先にしています」

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MOFUREのキャラクター制作にAIではなくイラストレーターを起用した理由

―― MOFUREのキャラクターづくりでは、AIではなく実力派のイラストレーターを起用されていますよね。なぜイラストレーターを起用するという判断になったんでしょうか。

脇坂氏「キャラクターのバックグラウンドとか世界観をきちんと作り上げたかったというのが大きな意図にあります。世間的にはAIイラストに関しては賛否両論あって、色んな意見が出ているんですけども、イラストの細部に込められた想いやこだわりについては、まだAIは追いつけていないのかなと感じています。

細部にこだわりを込めることで、ユーザーが『話し相手がどこか遠くで生きている』と感じられるようなキャラクターになってほしいという思いを込めて、今回はあえてAI生成ではなく、イラストレーターを起用しました」

キャラクター「月宮 琴音」: 朔月八雲
https://x.com/hassaku401
キャラクター「星乃 環」 : みなうさ
https://x.com/minausaaa

―― スピードを重視して小さく始めているプロジェクトとのことなので、最初はAIのキャラクターで十分なのかなとも感じていたんですけど、そこをあえて省略しなかったところにこだわりを感じました。実際のところ、課題感とはまた別のところをテストしているという意図もあったんでしょうか?

脇坂氏「そうですね。AIキャラクターだとどうしても量産的な印象があり、人の気持ちを強く動かすにはまだ少し難しいかなと懐疑的な部分がありました。そうではなく、人間が作っているという職人感、強いこだわりを要所要所に残すことで、キャラクターに『好きになれるポイント』をどんどん作っていきたいなと思ったので、今回イラストレーターさんにお願いしました」

―― AIが描いたキャラクターと実際のイラストレーターさんが描いた絵を比較したときに、やはりイラストレーターの方がいいよね、という意見やデータはあったりしますか。

脇坂氏「明確なデータというのはまだないんですが、イラストレーターさんの1つの作品だけではなく、その人が手掛けてきた他の作品にも背景やストーリーが感じられるというのがポイントですね。ユーザーがそのストーリー性に惹かれて好きになれるというところが、AI生成とは大きく異なる部分だと考えています」

―― 確かに。消費行動においてストーリーは重要ですね。AI時代はむしろそこが重要になってくる気がします。

脇坂氏「本当にその通りで、もちろん工場の量産品は安くて良いものがたくさんあるんですけど、やっぱりふとした瞬間に『職人が手掛けた漆塗りの物が欲しい』といった感情は、これからもずっと人の中にあると思います。最近は特にそのストーリー性や職人芸に人の感情が大きく動かされるんだなと感じています」

―― 今野さんは、この点についてはいかがですか? イラストレーターを起用するという判断に賛成派というか、良いなと感じられましたか。

今野氏「弊社の制作メンバーは基本的にコンテンツや作品が好きで、クリエイターをリスペクトしているメンバーが非常に多いんです。私自身もそうですが、作品を取り扱うコンテンツを作る際にはファンと同じ心理になれるようすごく努力していますし、今回のイラストレーター起用の方針は脇坂が決めたんですが、その裏側には既存のクリエイターさんたちに新しいチャンスを提供したいという思いもあります。

紙媒体で作品を作ってきた方々がデジタルやSNSなど新しい手段で発信するための1つの形として、AIやインタラクティブなコンテンツを利用してもらえればという考えがありますね」

イラストレーター選定のプロセスと基準

―― 今回MOFUREのキャラクターをイラストレーターさんに依頼しようということになった際、どういった基準で選定を行ったのでしょうか。依頼したいイラストレーターさん像というのはありましたか?

脇坂氏「実はここに関しては、本当に直感でして。自分自身が『この作品がいいな』とか『好きだな』と思えるイラストレーターさんにお願いしたほうが、キャラクター設定とか話し方を考える僕たち側の解像度も上がりますし、ユーザーにも好きになってもらえるものがより作りやすいんじゃないかなと思ったんですね。だから今回はかなり直感的に選びました」

―― 直感ですか!少し気になったのが、今回のプロジェクトでは皆さんキャラクターが好きなチームだと思うのですが、誰か1人が『この人だ』とトップダウンで決めるのか、それとも皆さんで議論して決めていくのか、どちらの方法を取られたんですか?

脇坂氏「これは開発の現場や雰囲気にもよるんですけど、今回に関してはみんなで好きなイラストレーターさんを持ち寄って、事前に用意していたキャラクター設定を見ながら『この人が雰囲気いいんじゃない?』といった感じで民主主義的に決めました」

―― なるほど、チーム内でイメージを持ち寄って、最終的に皆で決定していった感じなんですね。選定の際に特に重視したのはやっぱり絵柄とか世界観になるんでしょうか。それとも、もっと具体的な部分も含めて検討した感じでしょうか。

脇坂氏「絵柄と世界観、両方ですね。やっぱり絵柄が少し独特すぎたり、世界観が強すぎたりするとアプリとしての統一感が難しくなってしまうので、そこは考慮しました。その中でも特に重視したのは『寝る時に安心感を与えてくれるようなイラスト』を描いているイラストレーターさんというところですね」

共創するために重要な姿勢

―― イラストレーターさんに依頼することになった際、MOFUREのビジョンやコンセプトはどのように共有されたんですか?

脇坂氏「まず、このアプリ自体の社内で掲げていたコンセプトが『寂しい夜にいつも友達がそばにいる』というものだったので、それを第一に伝えました。

寂しい夜に友達がそばにいるって具体的にどういうことかなと考えたとき『ちょっと喋りたい』『ちょっと話したい』という時に自然に横にいて違和感なく会話ができる雰囲気を表現してほしいというお願いをしました。さらに寝落ち通話ということで、夜の雰囲気を出せるようなものをイラストレーターさんにお任せしました」

―― コンセプトや雰囲気を丁寧に共有しつつ、あとはイラストレーターさんの個性を尊重したという形なんですね。

今野氏「脇坂がクリエイターさんに依頼した時に、私自身もはっと気づいたのですが『今回描いていただいた作品はAIには学習させません』ということを最初の連絡でしっかり伝えていました。例えばポーズを変えたり他の用途に使ったりといったことをAIに学習させて利用することはありませんと」

―― それは非常に重要ですね。クリエイターさんは、自分のイラストをAIが勝手に学習することに不安を抱えている方も多いですよね。

今野氏「そうなんです。やはりクリエイターさんが自分のイラストをAIに学習されてしまうことに対してナーバスになっている状況があるので、その点を明確に伝えることで、安心して任せてもらえる環境が整ったのかなと感じています」

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