Apple社は、EUの消費者に対してAI機能「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」の提供を見送る方針を明らかにしました。これは、EUのデジタル市場法(DMA)による規制を懸念しているためです。DMAでは、異なる企業のサービス同士の連携を義務付けていますが、Apple社はこれによって自社製品の安全性やプライバシーが危険にさらされる可能性があると主張し、今年のリリースを見送ることを決定しました。
Apple Intelligence以外にも、iPhone Mirroring、SharePlay Screen Sharingの提供も見送ります。
DMAは、巨大IT企業による競争の阻害を防ぐことを目的として、自社アプリの優遇禁止やアプリストアの開放などを義務付けています。しかし、Apple社はこうした規制によってユーザーのプライバシーやデータの安全性が損なわれることを懸念し、反発しています。実際に、Apple社は今年に入ってから、EU当局からアプリストアの運営に関して18億ユーロ(現在の為替で約3100億円)の制裁金を科されています。
Apple Intelligenceは、今年の開発者会議(WWDC24)で発表され、多くの注目を集めたAI機能です。この機能は、AIを活用してユーザーの利便性を向上させることを目指していますが、EUでの導入が見送られたことで、今後の提供時期は不透明となっています。Apple社は発表文の中で、「DMAで定められているサービス連携の義務付けによって、ユーザーのプライバシーとデータの安全性が危険にさらされ、当社製品の安全性が損なわれる恐れがある」と述べています。
さらに、DMAの規制によって、Apple社はアプリストアでの競争を阻害しているとみなされ、EU規制当局から警告を受ける可能性があります。この規制の影響で、Apple社の最新技術の提供に制限がかかり、消費者が最新技術の恩恵を受ける機会が失われる可能性も出てきました。
Apple社の今回の決定は、EUの規制が企業の技術提供に大きな影響を与えることを示す一例と言えるでしょう。特に、DMAの規制が企業の製品やサービスの安全性にどのような影響を与えるかについて、今後も注目していく必要があります。DMAは、企業間の競争を促進する一方で、消費者の安全とプライバシーを保護するためのバランスを取る必要があります。今後の動向次第では、EU圏内の消費者が最新のAI技術を利用できる時期や方法が変わっていく可能性があります。
出典:Apple Won’t Roll Out AI Tech In EU Market Over Regulatory Concerns – Bloomberg