
中国のテクノロジー大手Alibabaは、1月29日に最新の大規模言語モデル「Qwen 2.5」を発表しました。同社は、OpenAIのGPT-4やDeepSeek-V3、MetaのLlama-3.1-405Bを上回る性能を持つと主張しました。
この緊急リリースの背景には、新興企業DeepSeekの急速な台頭があります。DeepSeekは1月10日にV3モデル搭載のAIアシスタントを、続いて20日にはR1モデルを発表。その革新的な低コスト開発手法は、シリコンバレーに衝撃を与え、米国テクノロジー企業の株価下落を引き起起こしました。

DeepSeekの成功は中国国内でも波紋を広げています。ByteDanceはDeepSeek-R1発表からわずか2日後に自社AIモデルをアップデート。さらに、昨年5月のDeepSeek-V2発表時には、1百万トークンあたり1元(約0.14ドル)という破格の価格設定で、アリババやバイドゥ、テンセントを巻き込んだ大規模な価格競争が発生しました。
DeepSeekの梁文峰創業者は、価格競争には関心がないとし、AGI(人工汎用知能)の実現を主目標に掲げています。
同社は大手テック企業とは異なり、トップ大学の若手研究者を中心とした研究所型の組織構造を採用。梁氏は「大規模基盤モデルには継続的なイノベーションが必要で、テック巨人の能力には限界がある」と指摘しています。
しかし、DeepSeekの急成長には懸念の声も。米Bloombergの報道によると、同社がOpenAIのデータを不正利用した可能性が指摘されており、MicrosoftとOpenAIが調査を進めています。特に「蒸留」と呼ばれる技術を用いて、OpenAIのモデルから知識を抽出した疑いが持たれています。
AIの「蒸留」は違法か? DeepSeek問題の法的論点
— 平岡将和 | AI Podcaster 🎙️ (@dicamp_hiraoka) January 30, 2025
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DeepSeekがOpenAIのデータを不正利用した可能性が報じられる中「蒸留」技術の法的な位置づけが注目されている。今回の重要ポイントをツリーでまとめました👇 pic.twitter.com/R9KoRY63FD
中国のAI開発競争は、技術革新とコスト効率の追求という側面と、知的財産権の保護という課題の両面で、グローバルなAI産業に大きな影響を与えつつあります。
AlibabaはWeChatの投稿で、新モデルQwen 2.5がDeepSeek-V3を性能面で上回ると主張していますが、両プラットフォームには潜在的なリスクも指摘されています。
これにはデータセキュリティやプライバシー、性能統計の信頼性、さらにはOpenAIやMicrosoftの知的財産権侵害の可能性など、複数の懸念事項が浮上しています。
しかし中国発のAI開発競争は、MetaのLlamaチームが緊急対応を迫られるなど、世界のテクノロジー業界に大きな影響を与えています。この競争は、AI開発の効率性と経済性に関する既存の常識を覆す可能性を示唆しています。
出典:What Is Ali Baba’s Qwen 2.5 AI Model, And How Does It Stacks Up?