AI新法が成立 城内実科学技術相「世界で最もAIを開発・活用しやすい国へ」

出典:人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案

人工知能(AI)の研究開発と利活用を後押しする「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(AI新法)が5月28日、参議院本会議で可決・成立しました。国内でAIを横断的に扱う初の法律で、政府は年内に施行準備を進めます。

法案は2月28日に国会へ提出され、4月24日に衆議院を通過していました。 成立を受け、AI政策を所管する城内実科学技術相は同日の記者会見で「日本が世界で最もAIを開発・活用しやすい国となるようめざす」と意気込みを示しました。

新法は罰則を設けず、事業者には事故調査などへの「協力義務」を課す基本法型です。重大事故や権利侵害が起きた場合、政府は調査・指導し企業名を公表できる一方、高リスク分野には将来的な規制強化も視野に入れます。 全閣僚で構成する「AI戦略本部」を設置し、国家AI基本計画を策定することも盛り込みました。

出典:人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案(AI法案)概要

海外を見ると、EUは2024年に発効したAI Actでリスク区分を設け、違反時に最大3,500万ユーロ(約52億円)または世界売上高7%の罰金を科す厳格な枠組みを採用しています。 米国は2023年10月の大統領令14110号で安全性評価やテスト結果の提出を義務付けましたが、連邦法は未整備でガイドライン中心です。 一方、中国は生成AIを対象とする暫定管理規定を2023年8月に施行し、公共向けサービスは「社会主義核心価値観」に沿う内容を義務付けています。

投資面でも日本の課題は大きいと指摘されます。スタンフォード大学の2025年AIインデックスによると、2024年の民間AI投資は米国1,090億8,000万ドル、中国92億9,000万ドルに対し、日本は9億3,000万ドルにとどまりました。

EU型の厳格規制と米国型の市場主導の中間に位置付く「協力型」日本モデルは、イノベーション促進とリスク対応を両立できるかが焦点です。城内氏の掲げる“世界一開発しやすい国”の実現には、柔軟な制度運用と投資拡大策を両輪で進める必要があります。運用次第で国内外のAIエコシステムに与える影響が注目されます。

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