2024年7月4日に、英国では総選挙が行われます。さまざまな候補者が立候補していますが、中でも興味深いのは無所属で立候補している「AIスティーブ」という名前の候補者です。
AIスティーブの正体は、実業家のスティーブン・エンダコット氏のデジタル・アバターです。投票用紙にはエンダコット氏の名前が載りますが、選挙活動を「実施」するのは、あくまでもAIスティーブです。
有権者は公式サイトでAIスティーブとチャットを通じて、AIスティーブの政治的意見や政策アイデアに触れられます。AIスティーブは一度に1万人と会話し、その対話を分析して政策課題を提示できます。提示された政策課題は地元のボランティアが評価し、評価の高いものだけが議会で追求されます。米国の月刊誌WIREDによれば、AIスティーブは既に稼働していて、人々の関心はパレスチナの紛争や地域のゴミ収集問題に集中しているそうです。
ただしAIスティーブはアバターという存在の性質上、物理的に議会へ出席できません。そのため、AIスティーブが当選した場合、議会にはエンダコット氏がAIスティーブの指示に基づいて、「彼」の代理人として出席します。
エンダコット氏によると、AIを議員として送り込むことで、有権者は24時間365日議員に直接コンタクトできるようになり、民主主義が改革される可能性があります。しかし、エンダコット氏はAIの政治利用に対する反発も予想しています。実際「コンセプトとしては興味深いが、(人間の)政治家もAIも、信用できないという点では共通している」とインタビューに答える有権者もいました。