【2025年】AIレイオフ事情まとめ!Part1

この記事は、Podcast「AI未来話」のエピソード「【2025年】AIレイオフ事情まとめ!Part1」を再構成した内容をお届けします。

2025年のレイオフ動向を、具体的な企業事例(TCS・Microsoft・Intel・Accenture)と業界別の潮流、さらにOpenAIやスタンフォードの研究知見をまとめました。

目次

2025年のレイオフ全体像

―― じゃあまずは全体から見ていきましょう。

「2025年テック業界だけで約18万人規模がレイオフされていて、そのうち約28%がAIや自動化ツールの導入に関係しているっていう数字が出てるんですよ。中間職とかサポート系のポジションが真っ先に削られているという現場感もありますし、地域や業界によっては新卒やエントリー層の採用を鈍化させる動きも出ていますね」

―― つまり、いまAIの波が当たってるのは“経験が浅い層”と“中間管理職層”の両方ってことか。

「そうですね。新人の単純業務はAIができるようになってるし、上の層も“AIで管理が自動化される”“意思決定支援ツールで階層を減らせる”みたいな流れで削られる。結果として真ん中がスカスカになっていく構造が生まれてる」

―― ああ、それは確かに“AI時代の組織構造”っぽい。トップと現場が近くなって、中間が減るっていう。

「まさに。実際にAIを導入している企業ほど、そういう傾向が見え始めてますね。で、今日はどのくらいのレイオフが起きてるか”を、4社ピックアップして見ていきます」

TCS 中間上級管理職の選別と約1万2000人削減

―― まずはTCS。ここはインド最大のITアウトソーシング企業で、いわゆる「安定の象徴」みたいな存在ですよね。

「そうなんです。インドでは“政府並みの安定雇用”って言われてるぐらいで、リストラなんてほとんど聞かなかった。でも今回は約1万2000人(全従業員の約2%)が削減対象になった。中間層〜上級管理職が中心という点が象徴的です。会社側の説明は“スキル・ミスマッチの是正”ですが、業界全体ではAI活用の浸透でテストやピープルマネジメントなどの役割が縮小しているという指摘が出ています」

―― 経験10年以上の層とか、長く会社にいる人たちが狙われたと。

「そう。テストや品質保証、インフラ運用のように定型化しやすい領域ほど影響が出やすい。TCS単体の公式説明は“AIが直接の理由ではない”というトーンですが、セクター全体の最適化の流れの中で、結果として“真ん中”が薄くなる現象が見えているのは確かですね」

―― しかもこの動き、ITだけじゃなくてインドでは金融にも広がってるらしいですね。

新卒・若年層の大量採用を手控える動きは目立っています。四半期ベースでも、インド大手の純増が鈍化し、TCSは過去最大級の四半期純減を出したという報道もあります」

Microsoft2025年の複数ラウンドで通年1万5000人超

―― 続いてはMicrosoft。ここもかなり大規模でしたね。

「はい。5月に約6000人(約3%)、7月に約9000人(約4%)と複数ラウンドで削減があり、通年で1万5000人超に達しました。対象は部門横断で、エンジニアやプロダクト、営業・管理系まで幅広い。背景は、AIインフラ投資の拡大や組織の層の見直し(フラット化)とされています」

Intel年内に人員を約7万5000人へ(20%超の縮小規模)

―― 次はIntel。ここは規模が桁違いですよね。

「そう。2025年は製造(Foundry)部門で15〜20%の削減計画が先行し、その後の発表では年内に全社人員を約7万5000人へと示されました。2024年末の水準から20%超の縮小に相当します。背景は製造改革とコスト最適化、AI半導体での出遅れ是正など。“AI導入で製造現場の人手が要らなくなった”という直結した説明より、事業再構築に伴う広義のリストラという位置づけが適切です」

―― つまり“AIだけが原因”ではないけど、“AI競争が経営判断に影響”という感じか。

「その通りです。工場計画の見直しや建設ペース調整など、構造的な打ち手と一体で進んでいます」

Accentureは2023年1.9万人削減+2025年は再編加速

―― 最後はAccenture。ここもかなり強気な動きでした。

「はい。2023年に約1万9000人の削減を発表し、直近の四半期で人員は約1万2000人レイオフされたとの報道もあり、“再教育できない人材は圧縮スケジュールで退出させる”というCEOの方針が示されました。一方で、生成AIの基礎研修を受けた社員は55万人超に達したとされ、削減と育成を同時に回しているのが特徴です」

―― なるほど。“AIが奪う”というより“AIを使える人に仕事が移る”という感じですね。

「そうですね。だからAIで仕事を失うというよりも、AIを使いこなせる人が評価される。Accentureは全社的なAIリテラシー底上げを打ち出していて、評価軸のシフトが現実に起きています」

業界別の変化(メディア・金融・航空・カスタマーサポート)

―― ここからは業界ごとの動きも見ていきましょう。テック以外でもAIの影響ってかなり出てきてますよね。

「そうですね。IT企業ほど露骨じゃないけど、静かに人員調整が進んでる業界が多いです。メディア、金融、航空、カスタマーサポート。このあたりはAIの影響が出てます」

メディア業界1万5000人のリストラ

―― まずは我々のフィールド、メディアから。アメリカのメディア業界だけで、2024年に約1万5000人のリストラがあったそうですね。

「そうなんです。現場では、記事制作の下流工程(コピー編集やファクトチェック等)を縮小する動きが各社で目立ちAIが初稿を作り、人が最終確認の運用に置き換わるケースが広がってきました」

―― たしかに、最近はAIが初稿を作って、最後に人間がチェックする流れが一般的になってきましたよね。

「そうなんです。そうなると、以前みたいに10人でやってたチームが3人で済むようになったりする」

―― つまり、“記事を作るよりもAIをどう運用するかの方が重要になってると。

「だからメディア業界でもAIの出力をコントロールできる人が残っていく感じ。逆に、原稿だけ書く人は淘汰されやすいですね」

ANZの3500人の削減

―― 次は金融業界。オーストラリアのANZ銀行が、2026年までに3500人を削減するって発表してましたよね。

「そうなんです。約3500人(全体の約8%)に加えて契約社員など1000人にも影響が及ぶ計画が示されました。CEOは公式には「重複の解消・組織の簡素化」と説明していてAIを直接の理由には挙げていません。ただ、審査やバックオフィス、CSの高度な自動化は同時並行で進んでおり、実態としてはデジタル化が人員構成に効いている面は否めません」

―― つまりAIで影響を受けてるけど、表ではAIとは言わないパターンか。

「そう。印象管理や労組対応もあるので、表現はあくまで“再編・効率化”。でも、日常業務には確実にAIが入り込んでいます」

航空ルフトハンザ管理部門4000人削減

―― そして航空業界。ドイツのルフトハンザが、2030年までに管理部門で4000人削減を発表したニュースも話題でした。

「はい。ここは正面からデジタル化とAIの活用で効率化と理由を明言しています。対象は主に管理・事務系。欧州企業としてはAIを理由に公然と掲げた点でも象徴的ですね」

カスタマーサポート 24時間対応と“人の価値”の再定義

―― 最後はカスタマーサポート。ここはAIの影響がめちゃくちゃ大きいですよね。

「はい。人手依存だった領域だけに、自己解決型チャット+人のエスカレーションの組み合わせが一気に浸透しました。象徴的なのがSalesforceで、マーク・ベニオフ氏はサポート人員を約9000人から約5000人へと明言しています。いわゆるエージェントAIの普及で、定型対応の多くをAIが肩代わりし、人はクレーム対応や高度な案件に集中する形です。Microsoftも自社のCSS(Customer Service & Support)でCopilot活用を進めており、大規模な支援体制のAI化が進んでいます」

―― 日本でもAIチャットで自己解決して、必要なときだけ人が出るって仕組みが一般化してきてますもんね。

「そうそう。結果的に“人であること”の価値が上がる。AIでは対処しきれない例外・感情・責任判断の部分が“プレミアム対応”になっていく、という再定義が起きています」

研究が示すタスク能力(OpenAI GDPval・Stanford分析)

―― さて、ここまで企業や業界の動きを見てきましたが、実際AIってどのくらい“仕事をこなせる”んですか?って気になりますよね。

「そうなんですよ。まさにそこを測ろうとしたのが、OpenAIが発表したGDPval評価なんです。これはAIが実社会のタスクをどれくらいの精度でこなせるかを数値化した研究ですね」

―― 9月の発表のやつですよね。

「そうです。OpenAIが2025年9月に出したもので、44職種・9産業・1,320件の専門タスクを集めて、主要モデルに解かせたんです。それを各分野の専門家がブラインドで評価して、人間とどれくらい差があるかを測定しました」

―― へえ、それめちゃくちゃ実践的なテストですね。結果はどうだったんですか?

「結果はかなり示唆的で、最先端モデルは専門家の成果物に近い品質まで到達という結論です。Claude Opus 4.1では課題の“約半数弱”で人間の専門家と同等かそれ以上という評価が出ていました。さらに“タスクをおよそ100倍速く、100分の1のコストで完了できる”という試算も示されています(※この比較はモデルの推論時間とAPI単価に基づくもので、人の監督や統合作業は含みません)」

―― うわ、それもうコスパの次元が違うな…。

「そうなんですよ。つまり、一人の人間の仕事の中でも定義が明確な単一タスクは、AIが超短時間・低コストでこなせるようになってきたということです」

―― でも、そんなに完璧ならもう人いらなくない?って思っちゃいますけど、現実はそう単純じゃないですよね。

GDPvalでも仕事は単一タスクの集合以上のものだと強調しています。一回限りの評価(ワンショット)で、曖昧さへの対応やコンテキストの積み上げはまだ十分に測れていない。だからメールの下書きや契約書の雛形のような作業は得意でも、誰と何をどう合意するかの判断は人が担う必要があるわけです」

―― GDPvalの報告でも、“仕事は単一タスクの集合以上のものだ”って書かれてましたね。

「はい。実務は複数タスクが連結したワークフローです。だから最近はAIをどう連携させるか、どこに人の確認を挟むかの設計力がより重要になっている。AIを使える人より“AIを回せる人”が強いという流れですね」

Stanfordの分析 若年層13%減

―― AI普及の影響を人の側から見たデータも出てましたよね。

「そう。スタンフォード大学のデジタル経済研究所の分析では、アメリカのADP給与データを用いて、AI露出度が高い職種では22〜25歳の雇用が相対的に13%減少していると報告されています(2022年末ごろ以降の変化)。一方で、同じ職種の年長層は雇用が概ね安定〜増。研究チームはAIの雇用影響は若年層から先に出るという示唆を示しています」

―― なるほど、入口の仕事が削られてるということか。

「そうですね。定型的・自動化しやすい初級タスクがAIに置き換わりやすい分、最初の経験を積む場が減る。ただし、これはAIが必ず雇用を減らすという決めつけではなく影響が出やすい層がどこかを示す初期エビデンスだと捉えるのが妥当です」

希望の手がかり

―― ここまでレイオフの話ばかりでしたけど、なんかちょっと救いがほしいですね…。

「実は希望の数字も出てるんですよ。世界経済フォーラム(WEF)の『Future of Jobs Report 2025』では、2025〜2030年の5年間で、現在の雇用の14%に当たる約1億7000万人の新規雇用が創出される一方、8%=約9200万人が置換・消滅して、純増は+7%(約7800万人)という見通しが示されています

―― あ、プラスの方が多いんですね。

「そう。つまりAIで減る仕事もあるけど、AIやデジタル化を前提に生まれる仕事の方がより多い可能性があるってこと。たとえばAI導入・運用を担う人やAIの出力をレビューする人、AIを介して顧客と対話する人など、新しい職域が拡大しています」

―― 奪われる仕事よりも“生まれる仕事”を見よう、ってことか。

「そうです。で、ここで大事なのがスキルの再配分。人間がやることとAIに任せることを切り分けて、伸ばす領域を設計し直す時期に入っていると思います」

スキル配分の再設計と前提スキル化

―― たとえば、どういうスキルを再設計していくイメージですか?

「メディアなら、執筆5:校閲5くらいだった比率を、執筆1:校閲5:リサーチ/設計4に再配分するイメージですね。書く部分はAI、人間は設計とチェックに時間を使うようになった」

―― AIと共存してる形ですね。

「そう。AIを敵に回すよりAIを相棒にしてどう設計するか。重要なのはAIを操作するスキルじゃなくて、AIと一緒に考えるスキル。だからAIスキルはExcelのような前提スキルになると思います」

―― つまり、もう学ぶ対象じゃなくて使えて当たり前のものになる、と。

「そう。次のフェーズはAIを使うではなくAI前提で働き方を設計する。たとえばどこまでAIに構成させて、どこを人が喋るかも設計の仕事になっている。試して、失敗して、調整する速度が成果を分けます」

エンディング

―― 今日はちょっと重たいテーマでしたけど、最後はポジティブに締めたいですね。

「そうですね。僕の中では、今の時期ってワンピースの新世界に行く前の2年間みたいな感覚。いったんバラバラになって修行して、また集合して次の海へ」

―― いまは“飛ばされ期”。

「そう。各自の島で鍛える時間が必要。でもその先にまた集まる未来がある。いまこの飛ばされ期をどう過ごすかで、次の世界での立ち位置が変わるはずです」

後半は以下をご覧ください。

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