英国全土の脳卒中センター AI診断導入で回復率が3倍に向上

英国では、全国107カ所の脳卒中センターで、脳卒中患者のCTスキャンを瞬時に解析する画期的なAI診断システムが導入されました。

このAIシステムは患者が病院に到着した直後にCT画像を分析し、わずか1分で脳卒中の種類や重症度、治療の必要性を判断します。これにより、医師が薬剤投与や緊急手術を実施するまでの時間が大幅に短縮されました。実際、病院到着から治療開始までの平均時間は、従来の140分から79分へと約1時間の短縮が達成されました。

治療開始までの時間短縮により、後遺症なく、あるいは軽度の障害のみで完全に回復できる患者の割合は劇的に増えています。NHS(英国国民保健サービス)の試験的導入では、この割合が従来の16%から48%へと約3倍にまで飛躍しました。イギリスでは毎年約8万人が脳卒中を発症しており、このAI診断システムの普及によって、多くの患者が重篤な障害を避け、日常生活への早期復帰が可能になると期待されています。

NHSで脳卒中治療を統括するデビッド・ハーグローブス氏は、「このAIを活用した診断支援技術は、脳卒中治療のあり方を根本的に変えるものです」と述べ、導入による意義を強調しました。

脳卒中の発症直後は、患者が1分あたり約200万個の脳細胞を失うため、迅速な対応が極めて重要とされています。従来、脳のCTスキャン画像の解析は非常に複雑で、専門医が行う必要がありました。そのため治療方法の判断に遅れが生じることも少なくありませんでしたが、このAIシステムの導入で人間の目では判別困難な細かな異常を的確に検知できるようになりました。

今回の発表は、スペイン・マドリードで開かれた世界最大規模の心臓学会「欧州心臓病学会議」の最終日に合わせて行われました。同会議では他にも、慢性的な交通騒音が脳卒中のリスクを高めるとの研究結果も発表されています。AI技術の導入と併せて、生活環境の改善も脳卒中リスク軽減に向けた重要な課題と位置付けられています。


出典:Stroke centres in England given AI tool that will help 50% of patients recover | Stroke | The Guardian

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