
米Googleが提供する検索サービスで、検索結果の上位に表示される「 AI による概要」(AI Overviews)について、欧州の独立系パブリッシャー団体がEU(欧州連合)の独占禁止法に違反すると訴える文書を、欧州委員会に提出したことがロイター通信によって報じられました。
問題となっているのは、Googleが検索結果ページの最上部に表示している、AIが検索結果を要約して表示する機能です。この機能は検索内容に関連した情報を、簡潔な文章でまとめてユーザーに示しています。しかし、デンマークをはじめとする欧州各国のデジタルメディア企業で構成される「Digital Publishers Alliance(デジタル・パブリッシャーズ・アライアンス)」は、Googleのこの機能がオリジナルのコンテンツを不当に利用し、パブリッシャーへのトラフィックや広告収入を減少させていると主張しています。
この団体は訴えの中で、「AIによる概要」が検索ユーザーにとって便利な半面、多くの場合、元の記事へのリンクをクリックする必要性を奪っていると指摘しています。これにより、パブリッシャー側は本来得られるはずだったユーザー訪問や広告収入を失い、深刻な経済的損失を受けていると訴えています。また団体は、Googleが検索結果において自社のAIサービスを優遇し、競合するパブリッシャーのコンテンツを軽視するという問題点もあわせて指摘しています。
一方、Googleの広報担当者は、この申し立てに対して異議を唱えています。同担当者は「GoogleのAIによる概要機能は、むしろユーザーが元のコンテンツを訪問する機会を増やすために設計されたものであり、パブリッシャーにとっても有益である」と主張しています。
今回提出された苦情に対して、欧州委員会は現時点で公式な見解を示していませんが、過去の事例を考慮すると、本件について詳しい調査を開始する可能性があります。欧州委員会が調査に乗り出した場合、Googleに対してはAI概要機能の運用方法に関して何らかの改善策や制限が求められる可能性があります。
欧州では、巨大テクノロジー企業に対する規制が近年厳格化しており、Googleをはじめ米国大手IT企業はこれまでも複数の競争法違反で多額の制裁金を課されてきました。今回の問題がさらに大きな争点となる可能性も指摘されており、今後の欧州委員会の対応が注目されています。
出典:Exclusive: Google’s AI Overviews hit by EU antitrust complaint from independent publishers | Reuters