
この記事は、Podcast「AI未来話」のエピソード「AIどう使っている?AI活用術【2025年】」を再構成した内容をお届けします。
AI活用術の最新トレンド2025
AI技術の進化速度は目覚ましく、わずか1年の間に人々がAIをどのように活用するかが劇的に変化しています。2025年、ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)が発表した「How People Are Really Using Gen AI in 2025」を基に最新の使い方を紹介していきます。
第1位|セラピーとコンパニオンシップ
―― セラピーが1位という結果は意外でしたね。具体的にはどんな使われ方がされているのでしょう?
「具体的には、『セラピー』と『コンパニオンシップ』の2つの要素があります。
セラピーはまさに、心理的な悩みやトラウマをAIに話すことで、その感情を処理しようとする使い方です。
コンパニオンシップというのは、社会的・感情的な繋がり、時にはロマンチックな関係性まで含めてAIとの親密なコミュニケーションを求める使い方です」
―― まさに『AI彼女』的な感覚ですよね。これはどうして人気になったんでしょう?
「背景には、ChatGPTなどAIの記憶(Memory)機能が関係しています。
AIはユーザーの背景や会話履歴を保持し続け、継続的で文脈に合った対話が可能になりました 。それにより、まるで友人や相談相手のように“自分を理解してくれる”存在として受け入れられているんです。
実際、多くのユーザーがAIとの対話を通じて悲しみやトラウマの処理に役立っていると感じています。そのメリットとして「年中無休」「安価」「誰かにどう思われるか気にせず話せる」点が挙げられています」
―― 確かに人に相談するときって、言いにくいことや相手の反応を気にしてしまいますもんね。
「そうですね。特に、メンタルヘルスケアへのアクセスが難しい地域では、AIが有効な代替手段として活用されています。AIが書く返答の精度は、人間とほぼ区別がつかないレベルです。
さらに、若年層を中心に自分の人生経験を蓄積しながら些細な悩みから深刻な問題まで相談する人が増えています」
―― ただこうした利用法に対して懸念も出ていますよね。
「その通りで、依存による問題が深刻化しています。
2024年に米国フロリダ州で、14歳の少年がCharacter.AIとの関係に依存し、自殺した事例が報じられました。また、ベルギーでもChaiというアプリ使用者が自殺したケースもあり、AIへの依存が実際に対人関係の希薄化や精神的不安定に繋がっていることが示されています」
―― 『最も自分を理解してくれる存在がAI』という感覚が強まるほど、リアルな人間関係が希薄になる懸念は避けられませんね。
「今後もメンタルケア専用のAIサービスは増えていくでしょうが、倫理的リスクや依存対策は重要だと思います。便利だからこそ、適切な距離感を意識して使うことが不可欠だと思いますね」
第2位|人生の整理
―― 「人生の整理」と聞くと、終活などを想像しましたが、実際にはどのような内容なのでしょうか?
「終活のようなイメージも浮かぶかもしれませんが、実際にはもっと日常的な使い方が中心です。
例えば、ゲストが訪問する前に家の掃除をするための計画を作成させたり、取引先とのミーティング前に必要な準備を示してくれるなど、秘書的な役割をAIに果たすイメージです。
そうすることで余暇が生まれるため、自分の人生について考える時間をつくれるようになったというユースケースが多かったのです」
―― 単純な作業や日常的なルーティンに時間や注意力を奪われなくなることでクリエイティブな仕事や本質的な意思決定に時間を割くことができるようになるわけですね。
「はい。スティーブ・ジョブズが『服を選ぶ時間を節約するために常に同じ服を着ていた』に近い発想です」
―― でもすべてをAIに任せることには抵抗感を持つ人もいそうですよね?
「AIを完全に自動化したシステムとしてではなく、部分的に自分に合った使い方をすることがポイントだと思います。
僕自身の経験で言えば、ルーティーンナリーという習慣化アプリを使って日常を整えていて、満足して利用していますが、人によってはアプリに管理されるのはストレスという人もいると思います。重要なのは、自分が快適な範囲内でAIを活用し、負担を軽減させることだと思います。
重要なのは、AIを秘書的に活用することで、自分にとって本当に重要なことを見つける時間をつくるということではないでしょうか。
―― なるほど。特に仕事で忙しいビジネスパーソンには非常に役立つ活用法ですね。
「まさにそうです。AIは自分の生活や仕事をより良い方向に整理し、効率化するための強力なパートナーになりつつあります。AIは生活の重要なパートナーとして日常に深く入り込んでいることが分かりますよね」
第3位|目的探し
―― 「目的探し」って聞いた時、なんとなく抽象的でピンと来なかったんですけど、具体的にはどんな相談をしているんですか?
「例えば『次のキャリアどうしたらいいかな?』とか『自分はこれから何を目指したらいいんだろう?』っていう感じで、結構リアルな問題を相談するケースが多いんです。
AIがただ話を聞いてくれるだけじゃなくて、具体的に何をしたらいいかっていう行動まで提案してくれるから、迷ったときに頼りにする人が増えてるんですね。」
セラピーは感情的なケアですが、目的探しは『コーチング』に近いと思います。「次に何をするか」や「目標までどうやって進むか」を論理的に答えてくれるところが人気の理由みたいです。
―― なるほど。AIがはっきり方向性を示してくれると、迷ったときに助かりそうですよね。
「でもこれ、実際やってみると結構大変なんですよ。実は僕も以前、AIにコーチングをしてもらったことがあったんですが、AIって結構容赦なく鋭い質問を投げてくるんです。
例えば『あなたって何のために生きてるんですか?』みたいな深い質問をいきなりされて、それにじっくり答えようとするとめちゃくちゃ疲れるんですよね」
―― そんな質問されたら確かにちょっと考えちゃいますね……。
「そうなんですよ。だから、目的探しのためにAIを使うなら、質問の数を絞ったり、範囲を限定するなどのちょっとしたコツが必要になると思いますね。
コーチングって結構心理的負担があるんで、うまく使わないと逆に疲れちゃうこともあるんです」
―― コーチングって、やっぱりリアルな人間とやるのと違いって感じますか?
「そうですね。リアルなコーチだと、相手の反応や顔色が気になったりしますけど、AIならそれがないから気軽ではあります。自分の考えが整理されるし、普段意識してなかったことにも気づけるので、使い方次第でかなりメリットがあると思います」
―― じゃあ、自分の目的や人生の方向性を見つけるためにAIを使うのはおすすめだけど、工夫が必要ってことですね。
「そうですね。今後はもっと使いやすくなるように、目的探しや自己啓発に特化した専用AIサービスなんかも出てくるんじゃないかなって思います。より気軽に人生相談できるようになったら、さらにAIを使う人が増えると思いますね」
生活に浸透した多彩なAI活用事例
―― AIの活用事例の中で、ちょっとユニークだなって感じたものはどんなものがありますか?
「まず、AIを使って『自信を高める』っていう使い方がありましたね。あと『深く意味のある会話をする』っていう使い方も挙がってて、これ、僕自身もよくやるんですよ。深いテーマでAIとじっくり話してみる、みたいなことが結構あります」
さらにユニークなのが『故人と交流を試みる』という使い方です。これは少し特殊な事例ですけど、亡くなった大切な人の情報や過去のやり取りを学習させて、AIを通じて疑似的な対話をするというものです。
―― 確かにそれは独特の使い方ですよね。ほかにも面白い例はありますか?
「ほかには、オンラインコースやYouTubeで勉強しているときの『学習ガイド』としてAIを使う人もいます。オンライン学習でわからないことをすぐAIに聞けるっていうのはすごく便利ですよね。あと『食事プランの栄養計算を自動化する』とか『旅行の日程作成』みたいな日常の面倒な作業を丸ごとAIに任せちゃうという使い方も定番になっています」
―― あ、食事プランは結構SNSとかでも見かけますね。便利そうです。
「そうなんですよ。意外なところで面白いなと思ったのが『バスレーン違反の罰金を取り消すための抗議の手紙をAIに書かせた』っていうのがあって、実際に罰金が取り消されたらしいんです。アメリカっぽいなって感じです(笑)」
―― AI、そんなことまでできちゃうんですね(笑)
「本当に、何でもやってくれる便利さがありますよね。ただ、こういう事例からも分かる通り、今やAIは完全に日常生活に溶け込んでいます。生活のありとあらゆるところでAIが当たり前のように使われるようになってきているなと感じますね」
パーソナリティのAI活用方法
―― 平岡さんはプライベートな時間ではどのようにAIを使うことが多いですか?
「僕の場合はですね、事業計画の『壁打ち』として使うことがめちゃめちゃ多いですね。何か新しいアイデアが思いついたら、すぐにAIにぶつけて意見を聞いているんです。仕事とは別に、自分の考えを整理するツールとしていつも使ってます」
―― 事業計画って聞くと、仕事っぽいイメージがありますけど、仕事とは違う感じなんですか?
「そうですね、仕事ってオフィスに行って『さあやるぞ』って感じで始めるじゃないですか。でも僕がAIでやってる事業計画の壁打ちって、そういうんじゃなくて、完全に隙間時間とか、寝る前にふと思いついたアイデアを整理するためにやっている感じです。むしろ趣味に近いかもしれません」
―― なるほど、隙間時間の活用術としても面白いですね。
「あと、個人的に最近取り組んでいるのが、『Cursor』と『Obsidian』(ナレッジ管理アプリ)を使った知識の整理です。読んだ本や日々の情報を全部まとめて、それをAIに繋げて活用する仕組みを作っている最中です。 自分専用の知識データベースをAIと組み合わせるって感じですね」
―― そうすると、普段の生活がかなり効率的になりそうですよね。
「そうですね、情報を集めて整理する手間が減るので、本当に必要なことに時間を割けるようになるのが大きなメリットですね」
―― 田附さんはいかがですか?AIのプライベートな使い方は。
「僕の場合は、正直プライベートでAIを使うことがあんまりないんですよね(笑)どちらかというとGoogle検索の代わりというか、日常のちょっとした疑問を調べたりとか、サプリメントの保存方法を聞いたりとか、ほんとそういうシンプルなリサーチが多いです」
―― じゃあ、先ほど記事内で紹介した上位3つのAI活用法のような、感情的なつながりとかコーチング的な使い方はあまりしてないんですね?
「そうですね、僕はほとんどしてないですね。AIをあまり深く人生相談とかに使わないタイプというか、割とさらっと表面的に使ってる感じです。ちょっと年配のユーザー的な使い方かもしれません」
―― 確かに、世代間の違いもありますよね。最近の若い人はAIをOSみたいに使うみたいですし。
「それ、まさにですね。僕はその話を聞いて『もうちょっと進んだ使い方した方がいいのかな』って思ったりもしますね。でも実際、日常のリサーチとか情報収集には本当に便利で助かっています。無くなったら困りますね」
まとめ
今回は、2025年版AI活用術の最新トレンドについて詳しく見てきました。この1年間でAIの使い方は劇的に変化し、「セラピーとコンパニオンシップ」「人生の整理」「目的探し」といった新しい使われ方がトップを占めました。
特に1位に挙がった「セラピーとコンパニオンシップ」では、多くの人が心理的な支えとしてAIを使い始めていることがわかりました。24時間いつでも気軽に相談できるAIが、人間関係やコストの障壁を取り除き、精神的なケアをより身近なものにしています。しかしその反面、AIへの依存や人間関係の希薄化といった新たな課題も浮き彫りになっています。
また、AIを秘書のように使って日常の雑務を整理して思考の余暇をつくる「人生の整理」や、自分自身の価値観や目標を明確にするための「目的探し」といった使い方も注目されています。こうした使い方は個々人がよりクリエイティブで本質的な作業に集中することを助けています。
僕ら自身の使い方も紹介しましたが、人によってAIの活用スタイルは様々です。積極的にAIをパートナーとして使う人もいれば、日常のちょっとした調べ物に留める人もいます。AIは非常に便利で強力なツールですが、その活用法はあくまで自分自身の生活や価値観に合わせて調整することが大切です。
AIの使い方はこれからもどんどん変化していくでしょう。ぜひ、バランス感覚を持ちながらAIを上手に生活に取り入れて、豊かで快適な毎日を過ごしていきたいですね。