AI検索の勝者は誰だ?Deep Researchがヤバい!

AIメディアを運営する男性2人が”ながら聞きでも未来がわかる”をテーマに30分で生成AIのトレンドを解説するPodcast「AI未来話」

番組のエピソードからトピックをピックアップして再構成したものをお届けします。今回は「AI検索の勝者は誰だ?Deep Researchがヤバい!」を再構成した内容をお届けします。

目次

Deep Researchの衝撃と背景

Deep Researchとは何か

OpenAIがChatGPT用の新機能としてリリースしたDeep Researchは、久々のゲームチェンジといえる機能です。

2025年2月2日からChatGPT Proユーザー向けに先行提供され、月額200$のProプランに含まれています。
研究者や企業で大きなリサーチ需要がある方々を中心に「一瞬で専門家レベルのリサーチができる」「これまでの調査コストが圧縮される」など、大きな衝撃を与えています。

しかもただ単に情報を収集するだけでなく、推論を加えて要点をまとめてくれるため従来の検索AIよりも遥かに深い洞察が得ることができます。

「ここまでの情報を短時間でどうやって集めたのだろう」と驚かされるほどの圧倒的な情報量とその整理能力は、まさにリサーチの新時代を感じさせます。

試用レポートと評判

私たちが使ってみた体感では、リサーチ結果が返ってくるまでに5〜10分程度というケースが多く、人力では到底敵わないクオリティのレポートをまとめてくれます。

しかも、ただ早いだけでなく専門家レベルの深い分析が提示されることが多いので、専門分野のリサーチャーや大学院の研究者などにとっては、とんでもない時短ツールになると感じました。

またRunwayの創業者であるSiqi Chen氏は、娘の治療法を研究するために民間チームに払っている2300万円相当の価値をも上回るかもしれないと評している点は、Deep Researchの大きな可能性を示唆しています。

高性能化の裏で抱える問題

とはいえ、万能というわけではありません。Deep Researchの出力はまだ一部ハルシネーション(幻覚)が見られる場面があり、特に最新のデータや速報系の情報は信頼性が万全とはいえません。

また、言うまでもなく価格がかなり高額なため、個人ユーザーが「月3万円出して使いたい」と思うかというと、かなりハードルが高い印象があります。

今後「o3」モデルで利用できるようになれば、より大規模かつ高額な推論が可能になると見られています。ただし、計算コストの高騰も避けられないため、この先も「法人向け・研究者向けに特化しながらブラッシュアップしていくのでは」というのが私たちの見立てです。

OpenAIを中心としたAI検索の進化

Deep Researchの位置づけ

私たちは今回のDeep Researchの登場が、AI検索の進化を一段と加速させるきっかけになると考えています。

検索というと従来はGoogle検索が定番でしたが、ChatGPTの台頭やMicrosoftのBingが「copilot」としてChatGPTをラッピングして利用する動きをみても明らかなように、今や「単なる検索」で終わらない形へと変化しているのです。

もともと検索エンジンの王者であるGoogleが打ち出したのは「検索結果をシンプルに素早く返す」ことで、ユーザーに最短距離の情報アクセスを提供することでした。

しかし、Deep Researchは「検索した上で、さらに推論や分析まで行いレポートまで作り上げる」という点で、従来の検索概念を超える形になっています。

私たちがイメージする未来は、ユーザーが「こういうテーマでレポートが欲しい」と投げかけると、AIが一通りの文献やウェブ情報を集めて研究レベルでまとめる――それが当たり前になる世界です。

Humanity Last Examのテスト結果

Deep ResearchはHumanity Last Exam(人類最後の試験)と呼ばれるベンチマークテストでも驚異的なスコアを叩き出しています。

これはAIの知識や思考力の限界を測るために数学や自然科学などの難問を集めた試験で、かつてGPT-4.0やDeep Seekなどはおおむね正解率9%台に留まっていました。

ところがDeep Researchは26.6%という圧倒的な正答率を示し、従来モデルを大きく上回る実力を証明してみせたのです。

出典:Introducing deep research | OpenAI

私たちは、AIが学術論文を書くようになる未来がそう遠くないと感じています。

実際にOpenAIがAGI開発の一環としてDeep Researchを位置づけているのも、こうした「既存の知識をまとめるだけでなく、新たな発見や仮説を提示するAI」の開発を目指しているからだと思っています。

AI検索エンジン各社の特徴と動向

Google(Gemini)の強さ

まず検索の王者、Googleです。

もともと「世界中の情報を整理し、誰もがアクセスできるようにする」というミッションを掲げてきたGoogleは、膨大なデータとユーザーベースを既に持っています。私たちはGoogleがGeminiで大きくアドバンテージを握っているポイントを2つ挙げます。

1つ目は、200万トークンものコンテキストを1セッションで処理できるという圧倒的な容量です。

巨大なデータベースをバックエンドに、幅広いジャンルにわたる高精度な検索が期待できます。

2つ目は、GmailやGoogleカレンダーなど、既に生活やビジネスに深く根付いているGoogleサービスと密接に連携できる点です。

私たちは、ユーザーがメールチェックやスケジュール管理をする延長で自然にGeminiを使うようになれば、AI検索のシェアはさらに広がると考えています。

Microsoft(Bing)の存在感

次に注目すべきは、Microsoftが手がけるBingです。
Bing自体は長らくGoogleの後塵を拝してきましたが、ChatGPTをラッピングする形で実装されて以降、その使い勝手が大きく変わりました。

特にMicrosoft製品(OfficeやWindows OSなど)への組み込みが進んでおり、私たちは「OSレベルでAIを活用できるかどうかが次の競争軸になる」と見ています。

実際、2025年以降のWindowsアップデートではAIアシスタントを標準搭載する計画が囁かれており、検索どころかPC全体の操作をBing Copilotがサポートしてくれる未来が現実味を帯びてきました。

GensparkとFeloの副兵

さらに私たちが注目しているのが、GensparkFeloの2社です。
Gensparkは2023年創業の新興企業ですが、GoogleやMicrosoftの元社員が集結して開発した独自エージェントによる検索で話題を集めています。

一部は無料で使え、ファクトチェックエージェントやマインドマップ作成など、非常に多機能で評価が高いです。

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一方、日本発のFeloは国内向けに特化したサービス設計をしており、キャンバ(Canva)との連携や日本語での自然な対話モデルを前面に押し出しています。

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これらは現状ではGoogleやMicrosoftのような巨大ユーザーベースこそありませんが、特定の領域でユーザーニーズを掴む可能性を秘めた存在だと感じています。

Perplexityが生む波紋

そしてPerplexityです。
2022年に創業し、かつては「Google検索上位5つをまとめただけ?」という辛口評価をしたこともありました。

私たちも初期バージョンのPerplexityはハルシネーションが多いと感じ、そこまで使う機会は多くありませんでした。ところがベンチャーキャピタルから2.5億ドル以上という潤沢な資金調達を続け、勢いを増しているのが事実です。

更に検索結果画面への広告導入を進めるなど、大きくビジネスモデルを変化させ始めています。広告フリーを打ち出しながら成長してきたAI検索業界にとっては、一つの転換点になると私たちは考えています。

ビジネスモデルの変化と広告導入のインパクト

なぜ広告が必要になるのか

多くのAI検索サービスは最初、広告を排除した「クリーンな検索体験」を提供してユーザーを獲得してきました。
しかし、AIの推論には莫大な計算コストがかかります。OpenAIのAPI料金を例にとっても、1メガトークンの入出力を行うだけで数千円から数万円かかるケースがあります。新しいモデルほど高精度である反面、推論コストは膨大になりがちです。

無料でユーザーを集めるフリーミアム戦略は有効ではあるものの、ユーザー数が増えればコストは天文学的に膨らんでいきます。

そこで最も分かりやすい収益化手段として浮上するのが広告です。Perplexityが取り入れようとしている広告モデルも、そうした背景での必然的な判断だと私たちは受け止めています。

広告導入の影響

広告が表示されると、ユーザー体験はどうしても損なわれがちです。特に「AI検索=ストレスフリー」というイメージでユーザーを取り込んできたサービスにとって、広告は大きなデメリットにもなり得ます。

そのため導入には慎重さが求められますが、Perplexityが一気に踏み切ったのは「先に収益モデルを固め、推論コストを補填する必要がある」と考えたからでしょう。

この決断は他社にも波及し、AI検索=広告フリーという路線が崩れるきっかけになるかもしれません。私たちは「ユーザーベースを拡大した後に広告を投入する」という、いわゆるフリーミアムの典型的な流れがAI検索でも進むのではないかと考えています。

AIアシスタントによる収益多様化

そして、AI検索の枠を超えたAIアシスタント化が進むことで、収益の柱は広告だけではなくなります。
ユーザーの行動を代行する「AIエージェント」的なサービスが普及すれば、検索結果画面で商品を買ってもらったり、アプリを予約してもらったりといった行動が増え、そこから手数料収益やアフィリエイトが発生する可能性があるのです。

たとえば食事を検索したら、そのままレストラン予約まで代行し、決済もAIが行ってくれる。ユーザーは手間が省け、サービス側は手数料収入を得る。こうした仕組みは、広告以上に大きな利益を生む可能性が高いと私たちは考えています。

Stripeのような基盤企業の強み

私たちが特に注目しているのがStripeの存在です。
オンライン決済の大手であるStripeが「AIエージェントの決済基盤」を抑えていけば、最終的にはStripeが大きな利益を得る可能性があると私たちは見ています。

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結局のところ、ユーザーがAIを使って商品やサービスを購入する行為は最終的に「支払い」というフェーズに行き着きます。その際にStripeが使われれば、彼らは手数料を得るわけです。

モデルの開発競争やユーザーの取り合いで各AI検索プラットフォームがしのぎを削っても、NVIDIAがGPUで勝者になったように、基盤を抑えた企業が勝つシナリオは十分にあり得る。私たちはそこにもAI検索戦争の裏側の構図を感じるのです。

AIアシスタント時代の到来と私たちの展望

AIアシスタント化の全容

私たちが今回のテーマで強く感じているのは、すでに「検索」という枠組みが変質しているということです。従来はGoogle検索を使ってリンクを踏み、必要な情報を得るだけでした。

しかしDeep ResearchやPerplexityが示すように、AI自体が私たちのリサーチを一括で代行する方向に進んでいます。

さらにPerplexityやGensparkが打ち出す「AIアシスタント」は、カレンダーへの予定登録や近所のレストランの予約など、実際の行動にまで踏み込み始めています。

この延長で、AIがPCやスマホのあらゆる操作を肩代わりするシナリオが見えてくると思っています。
「明日の天気教えて」とか「友人の誕生日に花を贈りたい」といった要望をAIに投げると、検索・商品の比較・決済・配送手配まですべてやってくれる。

これが当たり前のUXになれば、そもそも「検索画面を見る」という行為自体が減っていくでしょう。

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検索需要の減少と新たなリテラシー

私たちは「SEOの時代は終わる」とまでは断言しませんが、ユーザーが検索画面でリンク一覧を見比べて情報を取捨選択するというスタイルは明らかに変化していくと考えています。

AIアシスタントが最適解をすぐに導き出し、それを一括で処理してくれるなら、リンクのクリックや文献の読み込みはAIが担当し、私たちは結果だけ確認すれば良いという形になるからです。

それに伴い私たちは「AIが示す回答をどう捉えるか」という新たなリテラシーが求められると思います。

たとえDeep Researchのような高精度なAIであっても、ハルシネーションのリスクや根拠の確認作業がゼロになるわけではありません。

AIを信頼しつつ検証する態度を身につけることが、今後のビジネスや研究、日常生活でも重要になってくるでしょう。

行動の自動化がもたらす未来

私たちが注目している「AIエージェント」の世界は、検索行為の先にある「購買」「予約」「コミュニケーション」なども丸ごと支援します。

そうなると、やはり決済システムや連携する外部サービスとの統合が不可欠です。Stripeが普及していけば、そこに多くのアフィリエイトビジネスや広告ビジネスがのっかる流れになっていくでしょう。

また、AIアシスタントがユーザーの意思決定を肩代わりする領域が広がるほど、ユーザーの行動履歴や選好データはますます価値を持ちます。

広告導入の話題でも触れましたが、ユーザーにパーソナライズされた提案を行い、最終的な売買や予約まで行う構造が一般化すれば、検索結果をめぐる競争以上に「AIアシスタントに好まれるかどうか」が企業のマーケティング上の焦点になると考えています。

今後の展望

最終的に誰がAI検索の覇権を握るのかは断定できません。

Deep Researchのように専門家レベルの機能を提供して高価格帯を攻めるOpenAI、OSとの親和性を武器に一気に巻き返しを図るMicrosoft、広告と無料ユーザーを同居させて巨大プラットフォームを目指すGoogleやPerplexityなど、各社が得意領域を持ち寄ることで、用途によって異なる勝者が生まれるのではないかと思っています。

ただし私たちは、その裏でStripeが巨大な決済インフラを押さえている現実には大きな注目を寄せています。まるでNVIDIAがGPUハードウェアで覇権を握ったように、決済という根幹を支える部分でStripeがAI時代の一番の受益者になる可能性を、私たちは見逃せないと感じています。

まとめ

AI検索は新時代に突入し、OpenAIが提供するDeep Researchは専門家レベルのリサーチをも瞬時に行える力を示しました。

GoogleやMicrosoftといった大手に加え、GensparkやFelo、Perplexityなどの新興プレイヤーも台頭し、広告モデルやAIアシスタント化による収益多角化の流れが加速しています。検索の概念自体が変化するなか、私たちは基盤となる決済システムを握るStripeの存在にも注目しています。

用途や目的に合わせて複数のサービスが共存し、それぞれが独自の進化を遂げるのがこれからのAI検索の姿だと考えています。

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