
Appleは中国市場向けのAI機能を提供するため、Alibabaと提携を開始しました。これは、中国でのiPhoneの販売減少に対応し、競争力を強化する戦略の一環とみられます。
AppleとAlibabaが共同開発したAI機能は、すでに中国のサイバースペース規制当局に承認申請が提出されています。
Appleは2023年から中国企業のAIモデルを評価し、昨年はBaiduを主要パートナーに選定しました。しかし、BaiduのAIモデルの性能がAppleの期待を下回ったため、他の選択肢を検討することになりました。
その後、Tencent、ByteDance、Alibaba、DeepSeekのAIモデルをテストし、最終的にAlibabaをパートナーとして選定しました。DeepSeekのAIモデルは検討されましたが、同社の人員や経験がAppleの要件に対応できるレベルではないと判断され、採用は見送られました。
BaiduのAIモデルが完全に排除されたのか、それとも今後の選択肢として残るのかは不明ですが、Appleにとって中国市場での適切なAIパートナーの確保は重要な課題となっています。
Appleの中国市場での売上は2023年に2.2%減少、2024年には7.7%減少し、直近の四半期では11%減少しており、競争の激化が業績に影響を与えています。
Apple CEOのティム・クック氏は、先月の決算説明会で「Apple Intelligenceを中国で提供できなかったことが販売減少の要因の一つである」と述べました。
一方、中国の主要なスマートフォンメーカーであるHuaweiは、昨年5月から画像生成や文章校正などの生成AI機能を搭載したデバイスを提供しており、市場での優位性を確立しています。
Appleは、中国市場向けのAIモデルに求められる要件として、ユーザーの個人データを理解し、それに基づいた適切な回答を提供できることを重視しています。
Alibabaは、中国国内で膨大な購買履歴や決済データを持つため、そのデータをもとにAIをトレーニングしている点が評価されました。ただし、中国のデータプライバシー法により、Alibabaの持つ個人データをAppleが直接利用することはできません。
Alibabaは中国のAI業界を代表する企業の一つであり、独自の大規模言語モデル「通義千問(Tongyi Qianwen)」を開発しています。また、同社のクラウド部門は中国最大のクラウドサービスプロバイダーであり、企業向けのAIサービス提供に強みを持っています。
ただし、消費者向けAIアプリの分野ではByteDanceの「Doubao」チャットボットが圧倒的なユーザー数を誇っており、Alibabaは後れを取っている状況です。
Appleは4月に中国本土以外の簡体字中国語ユーザー向けにApple Intelligenceをリリースする予定であり、中国国内での提供には規制当局の承認が必要となります。中国の生成AI規制では、AIモデルが特定のセキュリティやプライバシー基準を満たすことが求められており、消費者向けに展開する前に正式な承認を受けなければなりません。
Appleは今後も中国市場での競争力を維持するために、現地のAI技術を活用しながら、規制の枠内で最適なソリューションを模索するとみられます。
出典:Apple Partners With Alibaba to Develop AI Features for iPhone Users in China — The Information