
Geminiを最大限に活用するためには、適切なプロンプトの作成が欠かせません。
本記事では、Googleが公式に発表したプロンプトガイドをもとに、効果的なプロンプトの書き方やおすすめのテクニックを詳しく解説します。
さらに、実際に試せるプロンプト例や、意図した出力を得るためのコツも紹介します。
Googleが公式発表したGeminiプロンプトガイドのコツや例

AIを使って情報を整理したり、業務を効率化する際に、「どのように質問するか」はとても重要です。
Geminiの効果的な指示の書き方については、Googleからプロンプトガイドが公開されています。
ここではガイドの内容に基づき、例を挙げながらポイントを解説します。
テクニック①:明確で具体的な指示を出す
AIに明確で具体的な指示を出すことで、求める結果を効率よく得ることができます。
指示が曖昧な場合、意図とは異なる回答が生成されることがあるため、以下の3つのポイントを押さえて、どのような回答を求めているかを明確にしましょう。
- 実施するタスクを明確に定義する
-
Geminiに何をしてほしいのかを明確に指定すると、より正確な回答を得られます。
例えば、以下のように「指示」と「テキスト」の内容を明確に分けた形式で指示を出すのが効果的です。
以下のテキストを要約してください。 テキスト:量子コンピュータは、量子力学の現象を利用し、現代の従来型コンピュータと比べて指数関数的に高速な計算を実行します。極めて小さなスケールでは、物質は粒子でありながら波としても振る舞う特性を持ち、量子コンピューティングはこの特性を活用するための特殊なハードウェアを用います。量子デバイスの動作原理は古典物理学の範囲を超えています。 大規模に展開されれば、量子コンピュータはさまざまな分野での活用が期待されます。例えば、サイバーセキュリティ分野では、既存の暗号を解読する一方で、新しい暗号技術の開発を支援することができます。また、気象学では、より精度の高い天気予報の開発に役立つ可能性があります。しかし、現在の最先端の量子コンピュータはまだ実験段階であり、実用化には至っていません。
このように「要約して」と明確に指示することで、不要な情報を省いた適切な回答を得ることができます。
- 出力の制約を指定する
-
出力の長さやフォーマットを指定すると、より意図に沿った回答を得ることができます。
以下のテキストを2文で要約してください。 テキスト:量子コンピュータは、量子力学の現象を利用し、現代の従来型コンピュータと比べて指数関数的に高速な計算を実行します。極めて小さなスケールでは、物質は粒子でありながら波としても振る舞う特性を持ち、量子コンピューティングはこの特性を活用するための特殊なハードウェアを用います。量子デバイスの動作原理は古典物理学の範囲を超えています。 大規模に展開されれば、量子コンピュータはさまざまな分野での活用が期待されます。例えば、サイバーセキュリティ分野では、既存の暗号を解読する一方で、新しい暗号技術の開発を支援することができます。また、気象学では、より精度の高い天気予報の開発に役立つ可能性があります。しかし、現在の最先端の量子コンピュータはまだ実験段階であり、実用化には至っていません。
このように、要約を短くする制約を明示的に記載することで、求める出力を得やすくなります。
- 出力のフォーマットを指定する
-
回答を分かりやすくするために、箇条書きや表形式など、フォーマットを指定することも有効です。
レモネードのビジネスを成功させるための方法を、箇条書きで5つ挙げてください。
このように、出力形式を指定することで、情報を整理しやすくなります。
また、GeminiのAPIを利用する場合は、以下のようなシステムプロンプトを設定することで、毎回指示を出さなくてもAIの回答のスタイルやルールをあらかじめ決めることができます。
すべての質問には、ユーザーが簡潔な回答を求めない限り、詳細で包括的な回答を行ってください。 質問の言語と同じ言語で応答してください。
テクニック②:少数ショットの例を含める
AIに指示を出す際、例を含めることでAIの回答精度を向上させる方法を「少数ショットプロンプト(Few-shot Prompting)」と呼びます。
それに対して、例を含めずに質問することを「ゼロショットプロンプト(Zero-shot Prompting)」と呼びます。
少数ショットプロンプトを使うと、AIは提供された例のパターンを学習し、より適切な回答を出すようになります。
少数ショットとゼロショットそれぞれの効果を比較してみましょう。
ゼロショットプロンプトの例:
雪はどのようにしてできるのですか?
AIの回答:

少数ショットプロンプトの例:
以下は、質問、説明、および回答のフォーマットを示す例です。
質問: 空はなぜ青いのですか?
説明1: 太陽光が大気中の粒子によって散乱され、青色の光がより多く散乱されるため。
説明2: レイリー散乱の影響。
回答: 説明2
質問: 地震の原因は何ですか?
説明1: 地殻のエネルギーが突然放出されるため。
説明2: 地殻のプレートがずれたり壊れたりして、地震波が発生する。
回答: 説明1
質問: 雪はどのようにしてできるのですか?
説明1: 大気中の水蒸気が氷の結晶となり、降雪することで地面に積もる。
説明2: 水蒸気が凍って雪の結晶になる。
回答:
AIの回答:

このように少数ショットプロンプトを使うと、AIは「短い説明を選ぶ」というルールを理解し、適切な回答を出すことができます。
少数ショットプロンプトの活用にあたってのポイントを以下に3つ挙げて説明します。
- 期待する回答の形式を例示する
-
AIに「どのような回答をすべきか」を示すために、回答の形式を統一しましょう。
以下のフォーマットで回答してください。 質問: AIとは何ですか? 回答: 人工知能(AI)は、人間の知的作業を模倣する技術。 質問: IoTとは何ですか? 回答: モノのインターネット(IoT)は、インターネットに接続されたデバイス同士が情報を交換する技術。 質問: DXとは何ですか? 回答:
- 回答の長さやスタイルを統一する
-
長文・短文のどちらの回答がほしいかを例示しましょう。
以下のフォーマットで、簡潔に回答してください。 質問: リモートワークのメリットは? 回答: 通勤時間の削減、ワークライフバランスの向上、生産性の向上。 質問: DXの目的は? 回答:
- 例の数を適切に調整する
-
提供する例の数が少なすぎるとAIがルールを理解できず、多すぎるとAIの柔軟性が低下します。
1〜3個の例を挙げるのが、AIの柔軟性を維持しつつ、適度な指示を与えるのに最適 です。
逆に5個以上の例を挙げた場合、 AIの出力が制約され、バリエーションが減る可能性があります。

テクニック③:コンテキスト情報を追加する
「コンテキスト情報」とは、AIが適切な回答を出すために必要な補足情報のことです。
例えば、「Wi-Fiがつながらない」という質問をAIにした場合、AIは一般的な対処法を回答するだけで、具体的なルーターの問題には対応できません。
Wi-Fiが切断されました。どうすればいいですか?

しかし、以下のようにWi-Fiルーターのランプの状態などの追加情報を提供すると、AIはより正確なトラブルシューティング方法を提案できます。
以下の情報を元に、Wi-Fiの接続トラブルを解決する方法を教えてください。
【ルーターのランプの状態】
- ゆっくり黄色に点滅 → ネットワークエラーの可能性
- 速く黄色に点滅 → 工場出荷時リセット中
- 黄色の点灯 → 初期化中
- 赤色の点灯 → 深刻なエラー
【質問】
Wi-Fiが切断され、ルーターのランプが黄色くゆっくり点滅しています。どうすればいいですか?

テクニック④:接頭辞を追加する
「接頭辞」とは、AIに特定のルールやフォーマットを理解させるために、プロンプトに追加する単語やフレーズのことです。
接頭辞を使うことで、AIが入力の意図を正しく理解し、期待通りの出力を生成しやすくなります。
接頭辞には、主に次の3種類があります。
- 入力接頭辞:入力の意味を明確にする
- 出力接頭辞:期待する出力の形式を指定する
- ラベル接頭辞:少数ショットプロンプトの例にラベルを付ける
例として、データを分類する際、AIが正しく判断できるように接頭辞を追加します。
以下の例では、「テキスト:」が入力接頭辞であり、「答え:」が出力接頭辞です。
以下のカテゴリーのいずれかに分類してください。
- 大きい
- 小さい
テキスト: サイ
答え: 大きい
テキスト: ネズミ
答え: 小さい
テキスト: カタツムリ
答え: 小さい
テキスト: ゾウ
答え:

テクニック⑤:モデルに部分的な入力を任せる
「部分的な入力」とは、AIが文章やデータを補完できるように、一部の情報をあらかじめ提示することです。
これにより、AIが適切な文脈を理解しやすくなり、求める形式での回答を得ることができます。
以下に2つの例を挙げて説明します。
- 商品の注文データを整理する
-
AIに「どの項目をどのフォーマットで整理するか」を示すために、部分的な入力を活用します。
以下の注文をJSON形式で整理してください。 有効な項目は「チーズバーガー」「ハンバーガー」「ポテト」「ドリンク」です。 注文: チーズバーガーとポテトをください。 出力:
「有効な項目」を明示することで、AIが必要なデータだけを整理できます。
- レポートのアウトラインを作成する
-
AIに「どのような構成でアウトラインを作成するか」を示すために、部分的な入力を提供します。
次のレポートのアウトラインを作成してください。 テーマ: 日本の観光業の成長 I. 序論 *
「I. 序論」まで記述することで、AIが適切な流れで続きを補完できます。
Geminiでプロンプトを入力する場合の注意点と非推奨事項

Geminiは高度なLLMですが、その特性上、適切に使用しなければ誤った情報を生成する可能性があります。
ここでは、Geminiを使用する際の注意点と、避けるべきプロンプトの例を紹介します。
注意点①:事実に基づく情報の生成をモデルに頼らない
Geminiは膨大なテキストデータを学習していますが、それらの情報を整理された知識として保持しているわけではなく、統計的なパターンに基づいてテキストを生成します。
そのため、事実と虚偽の区別が苦手であり、誤情報(ハルシネーション)を生じる可能性があります。

情報の信頼性を評価する機能もないため、不確実な情報を事実のように生成することがあります。
学習データが最新の状態ではないため、新しい出来事や変化した事実には対応できません。
また、創造的なテキスト生成に優れている一方で、必ずしも事実の正確性を保証するものではありません。
例えば、「〇〇という病気の最新治療法は?」と質問した場合、古い情報や誤った治療法を提示する可能性があります。
「〇〇事件の犯人は?」と尋ねた場合、存在しない情報を作り出すことがあるほか、実在しない人物や組織についてもっともらしい説明を生成する可能性もあります。
事実確認が必要な場合は、Geminiを一次情報源として使用せず、公式サイトや専門家の意見、信頼できるニュース記事を必ず参照することが重要です。
Geminiは、情報収集の初期段階や、情報源の要約、異なる情報源の比較などに活用するのが良いでしょう。
注意点②:数学や論理の問題では慎重に使用する
Geminiは自然言語の処理には優れていますが、数学記号や論理記号を正確に扱うことが不得手です。
また、電卓のように正確な計算を行う機能を持っていないため、特に桁数の多い計算では誤りが生じやすく、数学や論理の問題を解く際にステップを踏んだ思考が必要な場合は適切な解答を導き出せないことがあります。
自然言語で書かれた数学や論理の問題を正確に理解できないことがあり、意図とは異なる解答を生成することもあります。
例えば、複雑な方程式を解かせると、間違った答えを返す可能性があります。
論理パズルや推論問題では、誤った結論を導き出すことがあるほか、図形問題や空間認識が必要な問題ではテキストベースのGeminiでは対応が難しい場合があります。
数学や論理の問題を扱う際は、簡単な問題に限定し、出力を必ず検証することが重要です。
複雑な計算や正確性が求められる問題では、専門ツールや計算機を使用するのが適切です。
Geminiは数学や論理の問題に関するアイデア出しや、問題の理解を助ける補助的なツールとして活用するのが良いでしょう。
まとめ
Geminiの精度を最大限に引き出すためには、明確で具体的な指示を与えることが重要です。
プロンプトにコンテキスト情報を追加したり、例を含めることで、より意図に沿った回答を得やすくなります。
また、出力フォーマットを指定することで、情報の整理もしやすくなります。
本記事で紹介したGoogle推奨のプロンプトのコツを活用し、より効率的にGeminiを使いこなしましょう。
実際にプロンプトを試しながら、自分に合った活用法を見つけてみてください。