
ChatGPTの最新AIモデル「OpenAI o3」がついに正式公開され、ChatGPTから利用が可能となりました。
数学、コーディング、科学的推論の分野で驚異的な成果を記録しており、その特徴や性能が話題になっています。
また、同時に発表されたo4-miniとの違いや使い分けにも注目します。
この記事では、ChatGPTのOpenAI o3の特徴や使い方だけでなく、料金や無料ユーザーの制限などを紹介します。
ChatGPTの「OpenAI o3」とは?最大の特徴は画像認識とAIエージェント化

OpenAI o3は、これまでのAIモデルの枠を超えた革新的な機能を備えています。
特に大きな進化は、AIエージェントのような柔軟性を持ち、ユーザーの多様な要望に即座に対応できる点と、視覚情報を取り入れた推論が可能となった点です。
以下では、その具体的な能力について詳しく見ていきます。
AIエージェントのように全ツール利用可能
OpenAI o3の最大の特徴はAIエージェントのような動きができる点です。
WEB検索や画像生成などChatGPT内のすべてのツールを利用できるほか、APIを通じて自分専用のツールも使えるようになっています。
どのツールをどのタイミングで使うべきかを判断し、通常1分以内に具体的でわかりやすい回答を適切な形で提供します。
OpenAIの公式サイトでは「カリフォルニアの今年の夏の電力使用量は去年と比べてどうなる?」と質問すると、o3はネット上で公共のデータを調べ、Pythonを使って予測を立て、その結果をグラフや画像で見やすく表示すると説明しています。
また、その予測がなぜそうなるのか主要な要因を詳しく説明し、さらに途中で新しい情報が見つかった場合は、柔軟に対応して方向性を変えることも可能です。
例えば、検索エンジンを使って何度もウェブを調べ、結果を確認し、足りない情報があればさらに追加で調査します。
以下は東京の電力使用量を予測してもらった時の挙動です。
このようAIエージェント的な動きをすることで、従来のo1のように単なるデータベースの知識や推論だけでなく、常に最新の情報が求められるさまざまな作業にも対応できます。
OpenAI初の画像推論が可能なモデル
OpenAI o3では、画像を推論過程に取り入れられるようになりました。
単に画像を見るだけではなく、画像を使って考えたり判断したりすることが可能です。
これにより、視覚的な情報と文章の情報を組み合わせて、全く新しいタイプの問題解決ができるようになりました。
その結果、画像を含むさまざまな評価基準でトップクラスの成果をあげています。
例えば、ホワイトボードや教科書にある図、手書きのメモやスケッチの写真をアップロードすると、モデルはその内容を理解します。

たとえ画像がぼやけていたり、反転していたり、画質が低くても問題ありません。
また、ツールを使えば画像を回転させたり、ズームしたり、加工したりして、それを思考プロセスに役立てることができます。
これらのモデルは画像認識の分野で非常に高い精度を持っており、今まで解けなかった問題にも対応できるようになりました。
ChatGPTの「OpenAI o3」が誇る性能とベンチマーク結果

OpenAI o3はコーディング、数学、科学、視覚認識などの分野で特に性能を発揮する最も強力な推論モデルです。
本章では、OpenAI o3の特筆すべき性能や進化について詳しく解説します。
ARC-AGIスコア(汎用人工知能の指標)で人間を超える結果
OpenAI o3は、ARC-AGIスコア(汎用人工知能の指標)で、人間レベルを超える結果を記録していることも注目です。
ARC-AGIは、AI研究者のフランソワ・ショレ氏が2019年に開発したもので、AIが単にデータの関連性を覚えるだけでなく、抽象的な概念をきちんと理解し、それを未知の状況でも応用できる能力があるかどうかを評価するテストです。
人間の平均的な成績が85%である中、o3は87.5%という高いスコアを記録し、まさに人間超えを果たしたのです。

まさにAGI実現への重要な一歩とされ、話題を呼んでいます
o1と比較してエラー率が減少
外部の専門家の評価によれば、o3は複雑で実際的なタスクにおいて、前モデルo1と比べて重大なミスが約20%少ないという結果が出ています。
特に、プログラミングやビジネス、コンサルティング、クリエイティブなアイデアを出す分野で高いパフォーマンスを発揮しました。
初期のテスターは、分析の正確さや厳密さに注目し、特に生物学、数学、工学などの分野で新しい仮説を生み出し、それを批判的に検討できる能力が非常に優れていると評価しています。
コーディング能力・数学的推論能力・科学的推論能力が高い
- 数学的推論:複雑な数式や問題を正確に解く能力を備えています。大学レベルの試験や数学オリンピック予選で高得点を記録しており、計算だけでなく論理的思考の分野でも活躍します。
- コーディング能力:プログラミングの幅広い言語に対応し、エラー検出やコードの最適化を自動で行います。特に、競技プログラミングでは人間のトッププレイヤーを超えるパフォーマンスを発揮します。
- 科学的推論:物理や化学といった専門分野でも高度な分析を行い、研究者のサポートとしても使用されています。難解な問題に対しても論理的なアプローチを提供します。
ChatGPTの「OpenAI o3」と「OpenAI o4-mini」との違いと使い分け

「OpenAI o3」と「OpenAI o4-mini」との違い
o3はOpenAIが提供する最新で最も高性能な推論モデルで、複雑な問題に対して深い思考力を発揮します。
プログラミングや科学、視覚的な分析といった難しいタスクを特に得意とし、前世代のモデルo1と比較するとエラー率は約20%減少しています。
また、画像を直接思考プロセスに取り入れることができ、視覚推論において非常に高い精度を実現しています。
一方、o4-miniは速度やコスト効率に特化した小型モデルであり、数学やコーディング、視覚処理などの分野で素早く大量の処理を行うことができます。
o4-miniは利用制限が緩く設定されているため、幅広い場面で手軽に活用できます。これにより、o3が深く複雑な問題解決に最適であるのに対して、o4-miniは日常的で実務的な用途に向いています。
o1とo3の違いとo2がない理由
ChatGPT o3は、初期モデルであるo1から大きく進化を遂げました。
例えば、推論速度や処理精度が飛躍的に向上し、より多様なタスクに対応可能となりました。
o1と比べてアーキテクチャが大幅に改良され、推論速度や精度が飛躍的に向上しました。
以下が比較表です。
モデル | SWE Accuracy (%) | Codeforces Elo |
---|---|---|
o1 preview | 41.3 | 1258 |
o1 | 48.9 | 1891 |
o3 | 71.7 | 2727 |
参照:OpenAI YouTube
一方、o2が存在しない理由については、公式な発表はありませんが、一部では、「o2」という名称に関連した商標権やライセンスの問題があった可能性が指摘されています。
このため、o2をスキップして命名されたと言われています。
ChatGPTのOpenAI o3の料金プランと無料での制限

OpenAI o3はChatGPTの有料プランであるPlus・Pro・Team・Enterpriseのユーザーは利用が可能です。
しかし現時点(4/17)では無料ユーザーは利用することができません。
Plus・Pro・Team・Enterpriseユーザーの利用回数の制限
Plus・Pro・Team・Enterpriseのユーザーであれば、モデルセレクタからo3を選択可能です。

利用可能な回数に関しては、ChatGPT Plus・Team・Enterpriseのユーザーは週 50 件のメッセージをo3に送信することができます。
一方ChatGPT Proプランのユーザーは無制限に利用可能です。
ChatGPTの無料ユーザーはo3を使えない
無料ユーザーはo3を利用することができません。
しかし、同じタイミングでリリースされたo4-miniを利用することができます。
チャットを送信前に「推論」のボタンを押すことでデフォルトがo4-miniとなります。

OpenAI o3-miniは利用できなくなった
o3の正式版がリリースされるまでは、軽量モデルのo3-miniが利用可能でした。

しかしo4-miniがリリースされたタイミングでo3-miniはモデルセレクタから選択できなくなっています。
ChatGPTの料金プランについては以下の記事でまとめています。

OpenAIのChatGPT o3の活用事例と使い方

ChatGPT o3は、様々な分野での実用性が期待される最先端のAIモデルです。
この章では、プログラミング支援、教育分野、医療分野など、具体的な活用事例を通して、その可能性を探ります。
特に、専門的なタスクから日常業務に至るまで、幅広いニーズに対応できる点が注目されています。
プログラミング支援での活用方法
ChatGPT o3は、プログラミング支援の分野で革命的な役割を果たすツールです。
その応用範囲は初心者からプロフェッショナルまで広がり、多様なタスクを効率化します。
ChatGPT o3は、競技プログラミングの分野で画期的な成果を上げています。
例えば、CodeforcesでのEloスコアでは、o3モデルが2727を記録し、人間のトップレベルの競技者を超える性能を実証しました。
参照:OpenAI YouTube
これに対し、従来のo1モデルは1891、さらにo1プレビューでは1258に留まっており、o3の進化が明確に示されています。
ChatGPT o3は、新規コード生成や既存コードの最適化、さらにはデバッグプロセスの効率化まで幅広くサポートします。
例えば、「PythonでWebスクレイピングスクリプトを作成して」と指示するだけで、要件に沿った正確なコードを迅速に生成してくれるでしょう。
また、エラーコードやデバッグ情報を入力すれば、問題の原因を特定し、適切な修正案やトラブルシューティングガイドを提供します。
これらの機能により、開発プロセスを大幅に効率化し、初心者からプロフェッショナルまで幅広いユーザーが活用できるツールとして期待できます。
教育分野での応用
ChatGPT o3は、教育現場における学習体験の向上と効率化を大幅に加速させるツールとして期待されています。
特に、生成AIの可能性を教育に応用する試みをさらに前進させる力を持っているでしょう。
例えば、株式会社学研メソッドでは、ChatGPTを活用して教育を最適化しています。
学研メソッドは、文科省の生成AIに関するガイドライン等をふまえた形でChatGPTを活用し、教育分野において革新をもたらすことを目指しております。学研オリジナル学習システム(GDLS)の提供を通じて、生徒一人ひとりの学習体験を最適化し、新たな学びの道を切り拓いていきます。
参照:PR TIMES
ChatGPT o3では、このような取り組みをさらに加速させることが可能です。
具体的には、生徒の理解度や進捗に基づいて最適化された学習プランの自動生成や、個別指導のための詳細な解説の提供が挙げられます。
また、教師向けには、授業計画の作成支援や学習教材の効率的な作成をサポートすることで、教育の質を大幅に向上させることが期待されています。
医療分野での診断支援
ChatGPT o3は、医療分野における診断支援やデータ解析の分野でも、その能力を大いに発揮するでしょう。
AIを活用した診断支援は、医師の負担を軽減し、患者へのサービスの質を向上させる革新的な方法として注目されています。
ChatGPT o3は、以下のような具体的な応用例を通じて、医療現場の効率化を大幅に促進するでしょう。
- 精密なデータ解析:患者の病歴、検査結果、医療画像などの膨大なデータを瞬時に解析し、診断に必要な情報を抽出します。例えば、MRIやCTスキャンの画像データを基に、潜在的な異常を特定することが可能です。また、診断結果をもとに、追加の検査や治療の提案も行うことで、医師の意思決定をサポートします。
- 診断の迅速化:医師が診断に必要とする情報を簡潔に整理し、最適な治療プランを提示します。例えば、複雑な症例であっても、過去の同様のケースデータを基に迅速な対応策を示します。これにより、診断までの時間を短縮し、早期治療の実現を支援します。
- 個別化医療の推進:ChatGPT o3は、患者一人ひとりの特性に基づいて、個別化された治療プランを提案します。例えば、遺伝情報や生活習慣に基づく治療計画を作成することで、治療効果を最大化します。
ChatGPT o3は、医師が最終的な判断を行う「ヒューマン・イン・ザ・ループ」モデルを強化します。
AIが提供する情報はあくまで補助的なものであり、医師が最終的な責任を持って診断・治療を決定します。
このプロセスにより、AIの能力を活用しつつ、安全性と精度を確保することが可能です。
OpenAIのChatGPT o3はAGIを達成したのか?未来展望と課題

ChatGPT o3は、AGI(汎用人工知能)の実現に向けた重要な一歩とされていますが、その道のりには依然として課題が存在します。
この章では、AGI達成にどこまで近づいたのかを振り返るとともに、AI技術の発展がもたらす可能性や、社会的・倫理的な課題について見ていきましょう。
また、未来のAI活用を見据えた規制や技術的な改善の方向性についても掘り下げていきます。
AI規制と倫理的課題
多くの国でAI技術の利用を管理するためのライセンス制度が導入され始めています。
この制度の主な目的は、AI技術の悪用を防ぎ、安全で透明性の高い運用を実現することです。
目的はAIモデルの開発や運用における倫理的基準の確立、安全性の担保です。
AI技術の使用可能範囲が明確化され、医療、教育、公共政策といった分野での信頼性向上に寄与するでしょう。
AI技術が悪用されるリスクへの対策は、OpenAIが特に力を入れている分野です。
例えば、AIを使った偽情報の生成や自動化された不正行為が問題視されています。
このようなリスクに対応するため、OpenAIは外部専門家との連携するRed Teaming Networkというコミュニティを作り、リスク評価やAIモデルの安全性向上を図っています。
AGI実現に向けた課題
現在のAIシステムは、高度なタスクをこなす能力を持つ一方で、未知の状況や予測不可能な問題に対する適応力に課題があります。
例えば、以下です。
- 常識的推論の欠如:AIは、一般的な常識に基づいて解釈や判断を行うことが苦手で、人間ならば容易に解決できる問題に対応できないことがあります。
- 直感的判断の難しさ:AIは、大量のデータに基づいた分析が得意ですが、経験や直感に基づく迅速な判断を必要とするシナリオでは、精度が下がる場合があります。
AGI実現に向けたこれらの課題は、現段階では理論的なアプローチに留まっていますが、研究開発が進むにつれ、具体的な技術として具現化することが期待されています。
次世代のAIモデルは、現行の限界を超えることを目指して研究開発が進められています。
- 自由エネルギー原理と能動的推論:自由エネルギー原理を活用することで、AIが環境の変化に適応し、自己調整を行う仕組みを開発しています。これにより、AGIが動的に学習し、状況に応じた最適な行動を選択できるようになります。
- マルチモーダルAIの進化:文章、画像、音声といった複数の情報を同時に処理し、それらを統合して判断を行う能力の向上が求められています。これにより、人間のように多面的な視点から判断するAIが実現します。
- 世界モデルの高度化:AIが現実世界の因果関係や文化的背景を理解する能力を向上させる「世界モデル」の構築が進められています。この能力は、より意味のある判断を行い、複雑な社会的文脈に対応する上で不可欠です。
- 倫理と安全性の確立:AGIが倫理的に問題のない判断を行うためには、倫理的基準を学習する仕組みや、安全性を確保するガイドラインの確立が求められます。これにより、AGIが社会に悪影響を与えない形で活用される未来が期待されています。
社会に新たな可能性を切り開くと同時に、安全性や倫理的課題の克服が必要不可欠です。
まとめ
ChatGPT o3は、AI技術の進化を象徴するモデルであり、数学やコーディング、科学的推論など、さまざまな分野で驚異的な成果を上げています。
その性能は、AGI(汎用人工知能)の実現に向けた重要な一歩とされており、o3の登場により、AIの民主化がさらに進むことが期待できるでしょう。
また、料金プランや段階的な公開スケジュールが慎重に計画されており、さまざまな側面で革新をもたらす可能性を秘めています。