米国メディアのニューヨーク・タイムズ(New York Times)は、AI検索エンジンを提供するスタートアップ企業Perplexityに対し、自社のコンテンツの無断使用をやめるよう正式に要求しました。
タイムズは、Perplexityが著作権法に違反しているとして、10月末までに対応を求める警告書を送付しました。
この問題は、Perplexityがニューヨーク・タイムズのウェブサイトを無断でクロールし、タイムズの記事を基にAIが生成した要約や他の出力を提供しているということに起因しています。
タイムズの主張によれば、Perplexityとそのビジネスパートナーは、編集されたジャーナリズムを無許可で利用することで「不当に利益を得ている」としています。
これに対して、PerplexityのCEOであるアラヴィンド・スリニヴァス氏は、この問題を無視しているわけではないと述べ、「ニューヨーク・タイムズを含むすべての出版者と協力したい」との意向を示しています。
同社は、タイムズからの警告書に対する正式な返答を10月30日までに行う予定です。
AI技術の進化により、メディア業界は大きな変革の波にさらされています。
AIを活用した検索エンジンやツールは、データ分析や記事の要約、時には完全なAI生成記事まで、さまざまな形でメディアの作業を効率化する可能性を秘めています。
しかし、その一方で、ニュースメディアにとって無許可でコンテンツを使用されることは、広告収入や購読モデルに深刻な悪影響を及ぼすリスクがあり、業界全体がこの問題に直面しています。
ニューヨーク・タイムズは、すでに別のAI企業であるOpenAIに対しても著作権侵害で訴訟を起こしており、Perplexityとの争いはこの動きの一環として捉えられます。
タイムズ以外の出版者も同様の懸念を抱えており、ForbesやCondé Nastもまた、Perplexityによる無許可のコンテンツ使用を批判しています。
Perplexityは、Googleなどの巨大検索エンジンと競争するために開発された新興企業であり、ユーザーが質問を入力するとAIが生成した要約とリンクを表示する仕組みを提供しています。
しかし、タイムズは以前からウェブサイトのクロールを防ぐ措置を講じており、Perplexityがその指示を無視していると指摘しています。
Perplexityは一部の出版者と契約を結び、コンテンツ使用に対して収益の一部を共有する提案をしています。
具体的には、広告収入の最大25%をコンテンツ提供元に分配する仕組みを導入予定とされています。
しかし、タイムズを含む多くのメディア企業は、Perplexityの提案がOpenAIのような他の大規模なライセンス契約と比べて十分な魅力がないと感じており、交渉は難航しています。
今回の紛争は、AI技術がメディア業界に与える影響の一端を示しています。
AI技術は、ニュース記事の自動生成や要約、データ分析など、ジャーナリズムの未来を大きく変える可能性を持っていますが、同時に著作権侵害のリスクや、メディアビジネスの持続可能性に対する脅威も伴っています。
Perplexityとニューヨーク・タイムズの争いは、今後のAIとメディアの関係における重要な前例となる可能性があり、業界全体がこの問題の行方を注視しています。