次世代AI技術「AEI」で挑む日本の労働力不足問題。pluszero代表取締役会長CEO 小代義行氏単独インタビュー

 「AEI(Artifitial Elastic Intelligence)」という技術についてご存知でしょうか。pluszero社が掲げている独自コンセプトで取り組んでいる技術で、第4次AIブームの火付け役となることを目指しています。

 今回、我々はAEI技術の開発に取り組むpluszero社の代表取締役会長CEOである小代義行氏にインタビューを行い、AEI技術の詳細や将来の展望について伺いました。小代氏は、AEIを単なるツールではなく「労働力」として捉え、人間との協働を通じて生産性向上を目指す独自のビジョンを持っています。

 このインタビューでは、AEI技術の仕組みや応用例、日本の労働力不足問題への対応、そしてAIがもたらす未来の社会像について、小代氏の見解を詳しく聞きました。AIの発展、そしてAEI技術の実用化により、私たちの働き方や生活がどのように変わっていくのか、その可能性と課題を探ります。

目次

信頼性と柔軟性を両立させるAI技術「AEI」

――本日はよろしくお願いいたします。まずはpluszero社について教えてください。

小代 義行氏:pluszeroは、AIやIT技術を使ってソリューションを提供する会社です。現在の代表取締役の森遼太と、取締役副社長の永田基樹という2人の博士が立ち上げ、私が後から参画しました。Googleの設立に似た構図ですね。

 pluszeroの特徴は、手段に固執せずに目的達成のために最適な手段を選ぶという考え方が強い会社です。ディープラーニングやAIだけにこだわったビジネス展開はしていません。

――「AEI」という技術に注力されているとホームページで拝見しましたが、「AEI」とは具体的にどのような技術なのでしょうか?

小代氏:AEIは、機械学習的な「右脳的AI」とルールベースの「左脳的AI」を組み合わせた技術です。ここで理解していただきたいのは、機械学習ベースのAIとルールベースのAIのどちらかにこだわりすぎるのではなく、両方を使うということです。

 専門的にはこれを「二重過程モデル」と呼ぶのですが、この二重過程モデルで右脳と左脳のバランスが良いAIを独自ブランドとして「AEI」と呼んでいます。

 研究開発戦略センター(CRDS)という国の戦略機関があり、その機関が「人工知能研究の新潮流2」というペーパーを出しているのですが、その中で「今後日本が戦っていくべき領域は第4世代AI」という言い方をしていて、この第4世代AIの中身は「二重過程モデル」という言い方をしています。

 私たちはそのペーパーが公開されたタイミングで、すでに特許を取得していたのですが、この特許は「二重過程モデル」に基づく技術において、回避することが難しい汎用的なものです。

――「二重過程モデル」ですか。

 機械学習ベースのAIやLLMはビッグデータを読み込ませると勘が働くようになる、直感が働くようなテクノロジーですよね。これが非常に有用なのは間違いない一方、中身がブラックボックスであったり、コントロールしにくい部分があったり、ハルシネーションみたいな問題もあります。

 ですので、今のままだと信頼性が求められる領域には適用しにくいという特徴があります。信頼性が重視される場面ではルールベース寄りに、信頼性がそれほど必要がなく、柔軟性が求められる場合は機械学習の比重が高くなる。それをタスクや業務に応じて最適に組み合わせられるのが私たちの特徴です。

――AEIの具体的な応用例や、現在の開発状況について教えていただけますか?

小代氏:例えば、コールセンターでの利用を考えると、バックエンドでの会話の文字起こしや要約には既存のAIも使われています。ですが、コールセンターを人間レベルの品質で直接対応できるAIはまだありません。我々のAEIはそれを可能にしつつあり、実際にデモを実現できています。今は最終的な産業適用のためのシステム接続を進めている状況です。

 ほかにも、ITの運用保守や、金融商品の営業、製造業の設計など、ミスが許されない業務においても、部分的なタスクの効率化はLLM単体で可能だと思います。ですが、こういった信頼性が求められる領域に労働力を提供するような形でAIが入るケースはありません。そこを私たちは工夫しながらやっています。

AIを見える化して信頼性を追求していく

――確かに、ハルシネーションなどもありますし、信頼性のという観点では今のLLMをそのまま使うのは難しい部分もありますよね。

 その通りです。信頼性とは何かというのを紐解いていくと、ハードウェアでもソフトウェアでも品質のチェック項目が適合してはじめて信頼できるというか、品質保証されるわけです。つまり「見える化」をしていく必要があります。その見える化をするときには「知能のモデル化」をしなければなりません。

 それは、文理融合型の知の総合格闘技のような勝負になります。ディープラーニングだけだと高等数学なので数学系の人が多いですが、私たちの場合はそういった人たちだけでなく、言語学の専門家も含めて、モデルの見える化をし、LLMを上手くコントロールしようとしています。

 LLM的な部分に関しては、信頼性が求められる領域に限定すると、十分な水準に達していないのが現状です。そのため、自分たちで作っているときは、Claude 3でもGPT-4でも、どれでも良いんです。私たちからすると、高い信頼性が求められる分野で展開していくときにはどれでも良いんです。

 ですので、GAFAやAnthropicを含めて、大資本でモデルを作るようなこともしていませんし、MetaのLLaMAなどのオープンソースモデルに再学習させて独自モデルを作っているという会社でもありません。もちろん、エネルギー効率が良いGPUを自社で作るという会社でもありません。

 LLMにそこまで依存していないし、全部をやらせているわけではありません。”LLMをいかに私たちの技術でコントロールするか”、そういうポジショニングの会社です。

――AEIにおける「左脳的AI」と「右脳的AI」のバランスについて、もう少し詳しく教えていただけますか?

小代氏:全体を見える化しているという意味では左脳優位と言えるかもしれません。ただ、どちらのAIが優位かはタスクによります。人間でもロジカルに物事を考えているときは左脳が優位で、絵を描いているときは右脳が優位になりますよね。

 ただ、人間でもクリエイティブなことを考えるときに左脳と右脳を融合化させながら言語化するときもあります。言語化するとコントロールしやすくなったり、再現性が増したりしますよね。それはつまり「見える化」をするということです。

――タスク毎にどちらが優位になるかはAEIが自動で判定するのでしょうか。

小代氏:これは私たちの造語なのですが、「三重過程モデル」という表現を使います。機械学習ベースのAI、ルールベースのAI、そして人間のコラボレーションです。

 「AEI Desk」というSaaS型のプラットフォームを立ち上げているのですが、それはAIと人間がコラボレーションを行いながら進めていきます。例えば人間が「自動承認」と押せば自動化されます。現場によって、求められる基準が異なりますよね。「絶対ミスは許せない」のか、「自動化率を高めて生産性を高める」か。同じような業務があったとしても、そこに求められる信頼性が普遍的に決まっているわけではないのです。そこは現場毎に人間とAIのコラボレーションの中で決めていければ良いと思っています。

 今までのAIってツール的ですよね。「予約ツール」だったり「翻訳ツール」だったり。私たちは労働力としてみなされるようなレベルのAIを展開しようとしています。例えばコールセンターでAEIが人のように対応するとなったらそれは労働力じゃないですか。

 人がAIツールを使っていくのではなく、労働力としてのAEIと人間がコラボレーションしながら生産性を上げていく。そうすることで人間一人当たりの生産性を上げていく、ということをやろうとしています。

―― AEIを新入社員のように考えて、人間がタスク処理の仕方や判断基準を教えていくようなイメージでしょうか。

小代氏:そうですね、素直な新人のようなイメージで捉えていただいて、業務を回せば回すほど賢くなっていくというイメージを持っていただくのが良いのではないかと思っています。

 これはまだ開発中の技術ですが、私たちは見える化・モデル化をしているので、AEI自体が自己成長していきやすいようなことをやりやすいんですよ。

 ロードマップも立てられていて、AEIの自己成長の度合いについても世界に先駆けて実現をしていけるポジショニングにいると思っています。

専用のAIをたくさん作っていって、それらの網羅率が高まること自体が真のAGIに

―― 例えば今、「AIエージェント」がありますよね。その先に「AIエージェント」を束ねるAIがいて、「マルチエージェント」のような形になっているものもあります。AEIはそれに近い形なのでしょうか。

小代氏:最終的にはそうなります。AEIの特徴を明確に申し上げると、AGIに比べると汎用性は低いです。さきほどITの運用保守や、金融商品の営業、製造業の設計といったいくつかの例を挙げましたが、それぞれにAEIを作ります。そういう意味では汎用性が低いと言えるかもしれません。ただ、そういったエージェントがいっぱい出来たときに、それを束ねると汎用的になりますよね。

 そういう意味で、私たちは本当の意味で役に立つ汎用AIは、私たちのような専用のAIをたくさん作っていって、それらの網羅率が高まること自体が真のAGIに繋がると思っています。世界中の情報を蓄積して学習させたとしても業務は現場ごとに異なるので唯一解は出ませんからね。

 結局、1つ1つの現場ごとにアジャストされるのが大事なことだと思っています。LAGがそういった技術の1つで、LLMがあり、それをLAGでカスタマイズするというのがありますよね。私たちのAEIはそのカスタマイズのお化けだと考えていただければ良いのかもしれません。

 LAGはあくまでもLLMがメインで、LAGで少し上書きするようなイメージですよね。私たちはしっかりと見える化をし、そこにLLMを的確に使うようなイメージです。そのため、LAGと同じようにカスタマイズするのが勝負のポイントだと思っているのは共通ですが、そこの部分を見える化して、自分たちで掌握しようとしています。

―― AEIの開発がさらに進み、製造業やIT関連の様々な業務に導入されるようになったら、本当の意味で労働力を人間からAEIに置き換えていくという未来は見えているのでしょうか。

小代氏:そこを完全に見据えていますね。個人的な目標なのですが、私は今52歳で、60歳の時に日本の1人当たりのGDPを世界一にするという目標を持って20代半ばくらいから生きています。

 そうなった時に、家庭の中にもAEIが入り、ロボットの中にもAEIが入る。そんな状況を作り出せば、生産性を上げていけますよね。そういったことを目指しています。その中で最も早くイノベーションが起こせそうなものから取り組んでいるという状況です。

産業用途から消費者向けまで活用される労働力としてのAEI

―― AEIは産業用途がメインなのでしょうか。

小代氏:もちろん、消費者向けの用途もあります。コールセンターもその1つで、消費者が直接触れる部分です。例えば、機械的に「○○の場合は1のボタンを、△△の場合は2のボタンを押してください」と言われたらフラストレーションが溜まりますよね。

 金融商品の営業もそうです、営業は消費者が受けるので。様々な段階を踏まえて、最終的にはAIが営業マンになるといったこともあるでしょう。AIに営業されたくないと思われるかもしれないのですが、人間より丁寧に説明をしてくれたり、信頼できるような対応だったら、段階的に普及していき、Xデーが来るのではないかと言われています。

 いきなりそこを目指すのではなく、まずは営業の方々にアドバイスをする社内用途から始めたり、営業のロールプレイの相手役をさせたり。それらが洗練されてくると、実際のお客様を相手に営業をしてもいいかもしれない。そうやって段階的に普及させていこうと考えています。

―― それでは、AEIが目指す最終的な形はどこにあるのでしょうか。

 AEIのキーワードは“労働力”です。私たちは信頼性の高い労働力としてAIを提供しようとしています。これは私たちの造語ですが「Workforce as a service」のような市場を作りたいと考えています。労働力をサービスとして提供する市場を作って、その第一人者になりたいという思いがありますね。

 私たちの特許の名前が「仮想人材派遣」なんですよ、仮想の人材を派遣する。例えば登録したら、メールアドレスやZoomのアカウントが発行されて、アクセスすると人間がいるように業務をしてくれる。そういったものがゴールになるかなと思っています。さらにその先はロボットとの連携などが出てきて、カバレッジが上がっていくと思っています。

AIの活用により労働力不足が解消され、生産性も向上する

―― AIやAEIがこの先も進化していく中で、日本の未来はどう変わると思われますか?

小代氏:私たちが取り組んでいることが上手く進んでいくと、とてもポジティブになると考えています。

 例えば「日本では65歳以上の人口が何割を超えていて、高齢化が進んでいる」というようなニュースがありますよね。日本で必要な労働力が一定だとすると、高齢化が進むことにより必要労働力の不足数は右肩上がりに増加していきます。それは労働力をサービスとして提供するAEIが伸びる環境です。

 AIが人間を代替するのではなく、不足している労働力をAIが補う。日本がそういった国になっていって欲しいです。

 逆に、独自モデル開発など、勝算の低い分野に企業や国が注力しすぎないようにして欲しいですね。

―― 勝算が低い分野ですか。

 例えば半導体で戦うとした場合、経済産業省から4,000億円が必要という話なども出ています。ただ、個人的にはその規模だと全然足りないと思っていて、海外では数十兆円、数百兆円で戦っていると思うので、戦略を立てて勝てる勝負を仕掛ける必要があると思っています。そのため、勝てない勝負にお金や人といったリソースをつぎ込みすぎないことを願っています。

 AIに関しては、どこにお金を投資するのかが大事です。NVIDIAの技術者の試算では、学習モデルを計算するためのコンピューティングリソースが1年で10倍になっているそうです。つまり、こういうところにお金を注ぎ込みすぎると、1年でお金が1/10になるのと同じような形になります。そこで採算を取るのは難しく、結果的にNVIDIAの一人勝ちになってしまうんですね。

 そういったことを考えると、業界ごとにAIを労働力として捉えられるような事例を増やすところに、国を挙げてリソースを注いでいった方が良いと思っています。

―― 「AIに仕事が奪われるのでは」という捉え方もありますよね。それについてはどうお考えですか?

小代氏:中長期的に見て全体の生産性が高まっていくことは社会に良い影響を与えると思います。ただ、短期的には仕事の内容が変わったり、環境が変わったりしてしまう方もいらっしゃるかもしれません。この変化をどのように受け止めるかは、個人の状況や考え方によって異なります。

 企業は資金を調達し、その金額に対する利子があり、それより高く儲けないといけません。ただ、「失われた30年」では、それが低金利でハードルが低かったため、ゾンビ企業や生産性の低い人たちが残っていったという構図があります。

 そのハードルが高くなって、生産性が高い会社が生き残っていくようになれば、中長期的にはその企業や国が繁栄していくわけです。

 確かに短期的なスパンで見ると、低生産性の企業や個人が変化を求められるので、それをネガティブに捉えてしまうかもしれません。ですが、高生産性の仕組みを国、企業、そして個人レベルで創出し普及させることが重要です。この仕組みが適切に機能し、その恩恵が公平に分配されれば、社会全体の生産性が向上するでしょう。その結果、人々の可処分時間や可処分所得が増加し、より豊かな生活が実現できると考えています。

―― ありがとうございました。

会社概要

社名:株式会社 pluszero(プラスゼロ)
住所:〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-6-10 仙田ビル4F
代表者:小代 義行 / 森 遼太
設立:2018年7月10日
HP:https://plus-zero.co.jp/

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