「ReActプロンプトって何?どうやって活用すればいいの?」と疑問に思っている方も多いでしょう。
この記事では、ReActプロンプトの基本から具体的な活用例をわかりやすく解説しています。
読み終える頃には、ChatGPTをあなたの業務やプロジェクトに活用できるスキルを得ることができます。
ReActプロンプトとは?ChatGPTに考えさせるプロンプト
ReActプロンプトとは、ChatGPTのようなAIに対して段階的に思考を促すためのプロンプトです。
簡単に言うと、「考える」と「行動する」を組み合わせることで、AIがより的確に計画を立てられるようにする技術です。
実際に、2022年に発表された論文「ReAct: Synergizing Reasoning and Acting in Language Models」でも、ReActプロンプトを使えば複雑な質問応答(HotpotQA)や事実確認(Fever)のタスクにおいて、情報の正確性が大幅に向上することが示されています。
具体的には、質問応答 (HotpotQA) と事実検証 (Fever) において、ReAct は単純な Wikipedia API と対話することで、思考連鎖推論でよく見られる幻覚やエラー伝播の問題を克服し、推論の痕跡のないベースラインよりも解釈しやすい人間のようなタスク解決の軌跡を生成します。2 つの対話型意思決定ベンチマーク (ALFWorld と WebShop) では、コンテキスト内の例が 1 つまたは 2 つしかない場合でも、ReAct は模倣学習と強化学習の手法をそれぞれ 34% と 10% の絶対成功率で上回ります。
出典:ReAct: Synergizing Reasoning and Acting in Language Models
従来のCoTプロンプティングという手法では、AIに思考の手順を教えることで、正しい答えを導き出せるようにしていましたが、この方法ではAIが元々知っている情報しか使えないという制限がありました。
私たち人間は、何かを考える時にインターネットで調べたり、周りの人に聞いたりして、新しい情報を取り入れることができます。
ReActプロンプトは、まさに人間のように、Wikipediaなどの外部から得た情報を「観察」として取り入れることができます。
これにより、AIはより多くの情報に基づいて「考える」ことができるようになり、「行動」の精度も向上します。
CoTプロンプティングについては以下の記事で解説しています。
【コピペOK】ReActプロンプトのテンプレート
ReActプロンプトには決まったテンプレートの形があります。
ReActプロンプトを使う場合は、以下のテンプレートをコピペして、使いたい指示内容を入力して活用してください。
入力文章(質問または指示)
Thought :
Action :
Observation :
それぞれの入力項目について解説します。
- 入力文章(質問または指示)
-
ユーザーがChatGPTに質問や指示を入力する部分です。
データ分析、文章生成、要約などの具体的な指示を与えることができます。 - Thought
-
ChatGPTが入力された質問や指示に対してどのように推論を進めるかを出力します。
複数の情報源を評価したり、関連性を分析することが可能です。 - Action
-
ChatGPTの取った行動を出力します。
指定されたデータを検索する、関連するドキュメントを調査する、あるいは特定のアルゴリズムを実行するなどの具体的なアクションがここで実行されます。 - Observation
-
Actionの行動から得られた情報を評価し、新たな質問を生成したり、追加の調査が必要かどうかをここに出力します。
これらのステップを通じて、ChatGPTは表面的な回答ではなく、具体的かつ精度の高い情報をユーザーに回答することができます。
ReActプロンプトのChatGPTでの活用例
ReActプロンプトは、さまざまなビジネスシーンで活用することができます。
具体的な活用例として以下のようなものが挙げられます。
- 市場調査を通じて製品カテゴリや市場プレーヤーの動向を分析する
- 製品開発のための消費者のニーズや改善点の特定する
- コンテンツ戦略を策定する際の、効果的なコンテンツを特定する
- 採用戦略で求められるスキルセットや企業の採用動向の把握する
- 顧客分析を通じて、特定の顧客セグメントの購買行動を理解し、将来のトレンドの予測する
今回は、デジタルマーケティングにおける競合分析と戦略立案のReActプロンプトの活用例を紹介します。
ReActプロンプトの活用例①:デジタルマーケティングにおける情報収集
具体的な指示の内容は以下の通りです。
競合他社の広告キャンペーンを特定し、その詳細(キーワード、ターゲット、広告のクリエイティブ要素など)をリストアップしてください。
Thought :
Action :
Observation :
こちらのReActプロンプトを送る際は、「競合他社」を具体的なURLに置き換えることで、競合分析をスムーズに行うことができます。
このReActプロンプトを送ることで、以下のような回答を得ることができます。
ReActプロンプトの活用例②:デジタルマーケティングにおける競合分析
次に、集めた競合他社の正確な情報を基に、さらなる分析を行うためのReActプロンプトを紹介します。
収集したデータを元に、競合他社の広告戦略の共通点と差異を分析し、成功要因を特定してください。
Thought :
Action :
Observation :
実際に得られたReActプロンプトの回答は以下の通りです。
1つ目のReActプロンプトと2つ目のReActプロンプト活用することで、競合他社の広告キャンペーンの詳細を分析し、その成功要因を明らかにすることができました。
ReActプロンプトの活用例③:デジタルマーケティングにおける戦略立案
ここまでの出力結果を基に、次のReActプロンプトで競合の成功要因を考慮して、自社のデジタルマーケティング戦略に具体的にどう活かすかをChatGPTに提案させたいと思います。
競合他社の成功要因を考慮し、自社のデジタルマーケティング戦略にどのように反映させるか具体的なアクションプランを提案してください。
Thought :
Action :
Observation :
このReActプロンプトを送った結果がこちらです。
このようにReActプロンプトを活用することで、競合他社の情報を収集・分析し、自社の実践的な行動に反映させることができます。
さらにReActプロンプトを連続的に使用することで、ChatGPTは表面的な回答にとどまらず、具体的な競合分析から戦略立案までの一貫したプロセスをサポートすることができます。
ReActプロンプトのメリット
ReActプロンプトを活用することで得られるメリットは、次の3つです。
- 正確で信頼性の高い情報を得られる
- 具体的な回答を得られる
- 幅広い分野での柔軟な対応力
それぞれ順番に解説します。
ReActプロンプトのメリット①:正確で信頼性の高い情報を得られる
まず一つ目のメリットは、正確で信頼性の高い情報を得られるという点です。
ReActプロンプトは、「思考(Thought)」「行動(Action)」「観察(Observation)」という三つのステップを通じてユーザーの指示の意図を理解し、関連情報を適切に評価します。
そのため、ChatGPTは正確で信頼性の高い情報をユーザーに提供することができます。
ReActプロンプトのメリット②:正確で信頼性の高い情報を得られる
二つ目のメリットは、具体的な回答を得られる点です。
ReActプロンプトを活用することで、ChatGPTは正確な情報に基づいて具体的なデータを検索したり、競合調査を実施することが可能です。
このため、新しい市場への参入戦略や、競合分析による製品の差別化ポイントの特定といった複雑な問題に対しても、現実的で実行可能な回答を導き出すことができます。
ReActプロンプトのメリット③:幅広い分野での柔軟な対応力
三つ目のメリットは、幅広い分野での柔軟な対応力です。
ReActプロンプトは、マーケティング、技術トラブルシューティング、プロジェクト管理など、さまざまなビジネスシーンに対応できます。
このように非常に汎用性が高い点も、ReActプロンプトの大きなメリットです。
ReActプロンプトのデメリット
一方で、ReActプロンプトには2つのデメリットが存在します。
- 出力内容を理解する必要がある
- 回答に時間がかかる
それぞれ順番に解説します。
ReActプロンプトのデメリット①:出力内容を理解する必要がある
1つ目のデメリットは、出力内容を理解する必要があるという点です。
ReActプロンプトは「Thought」「Action」「Observation」という段階を経て回答を生成しますが、この構造は通常のプロンプトよりも複雑です。
確かにテンプレートを使えば簡単に始められますが、複雑な問題に対応するためには、各ステップで出力された内容を、ユーザーがしっかりと理解することが求められます。
そのため、初めて使用するユーザーはプロンプトの設定や使い方に自信を持てず、結果として期待した情報や解決策が得られない可能性があります。
ReActプロンプトのデメリット②:回答に時間がかかる
2つ目のデメリットは、回答に時間がかかる点です。
複数のステップを経るため、他のプロンプトに比べて処理に時間がかかります。
例えば、「最新のマーケティングトレンドを教えてください」という質問でも、ReActプロンプトを使わなければ数秒で回答を得ることができますが、ReActプロンプトは段階的に処理が行われるため、回答が数十秒遅れることがあります。
ReActプロンプトが活用できる場面
ReActプロンプトは以下の場面で使うことができます。
- 新製品の市場導入
- プロジェクト管理
- 教育やトレーニング
- コンサルティング
これらのReActプロンプトの使える場面を順番に解説していきます。
新製品の市場導入
新製品の市場導入では、ReActプロンプトを活用することで、顧客のニーズや嗜好を詳細に分析し、新製品が市場でどのように受け入れられるかを予測することができます。
予測した情報を基にして、さらにリスクを抑えた戦略的な市場参入を図ることが可能です。
プロジェクト管理
新製品の導入プロジェクトを成功させるためには、プロジェクト管理が不可欠になっています。
プロジェクトの各ステップを整理し、目標や期限を設定しながら、進捗を効果的に管理する場面でReActプロンプトを活用することができます。
ReActプロンプトを活用することで、プロジェクトが計画通りに進行するためのサポートを得ることができます。
教育やトレーニング
教育やトレーニングの分野では、ReActプロンプトを活用することで学習者の進捗に応じたフィードバックを行うことができます。
これにより、学習者のスキル向上を効果的に支援することができます。
コンサルティング
コンサルティングにおいても、ReActプロンプトはクライアントの現状を分析し、課題を明確にするために活用できます。
その結果として、実行可能な改善策と具体的なアクションプランを提案し、クライアントの問題解決をサポートすることができるようになっています。
ReActプロンプトが向いていない場合のおすすめプロンプト
ReActプロンプトが難しいと感じた初心者の方や、出力したい成果物とReActプロンプトの相性があまり良くない場合など、ReActプロンプトが向いていない場合のおすすめプロンプトを紹介します。
以下で紹介するのは、ともにZero-Shotプロンプティングと呼ばれる手法で、プロンプトエンジニアリングの基礎中の基礎です。
しかし、簡単であるがゆえに、なかなか思ったような出力結果が得られない場合もあるということは覚えておきましょう。
Q&Aプロンプト
ReActプロンプトを使ってみて理解が難しいと感じた場合には、シンプルなQ&Aプロンプトから始めることが効果的です。
例えば、「ChatGPTとは何ですか?」というシンプルな質問形式のプロンプトを使うことで、簡単に回答を得ることができます。
プロンプトエンジニアリングを始めたばかりという場合は、Q&Aプロンプトから初めてみてください。
ダイレクトインストラクションプロンプト
回答の出力に時間をかけたくない場合には、ダイレクトインストラクションプロンプトが適しています。
たとえば、「最新のマーケティングトレンドを3つ教えてください」という風に、具体的で直接的な指示を与えることで、迅速に回答を得る方法です。